2025年に向け、国は地域包括ケア体制の構築を進めている。しかし、そのためには介護人材の確保、社会保障財源の確保などさまざまな課題がある。これらの課題解決に向け、国としてどう取り組むのか。自由民主党地方創生実行統合本部長を務める河村建夫衆議院議員に話を聞いた。

 

 

── 現在までの国の介護・福祉政策の歩み、今後のあり方などについて、意見を聞かせてください。

 

河村 介護保険法の条文は200条を越えます。それだけに介護は日本にとって重要テーマです。現在、国では地域包括ケアシステムの構築に取り組んでいますが、このためには国のあらゆる産業・施策を総動員する必要性があります。

 今後は他産業の企業もノウハウや技術、情報網、人材などを介護・福祉分野に投じるなど、関与を深める必要があるでしょう。

 

 

── 「オールジャパン」で取り組む必要がある、ということですね。

 

河村 2015年に発表したアベノミクス「新3本の矢」のひとつに「介護離職ゼロ」があります。急速な核家族化の進行により、介護の負担が特定の人に重くのしかかる様になっています。「介護をする家族、特に介護の担い手となることが多い女性をいかに支えていくか」。今後の介護保険制度改革も、その視点に立脚する必要があります。

 

 

── 介護者支援の考え方ですね。

 

河村 イギリスやオーストラリアには、ケアラーズ法などと呼ばれる介護者支援の法律があります。こうした考え方や仕組みは、今後の日本でも絶対に必要です。最近はNPO法人などが介護者サロンを運営するなど、介護者支援の考えが広がっています。介護者支援は政治の世界でも10年程前より議論されてきましたし、3年ほど前にはケアラーズ議連が発足し、私がその代表を務めています。

 

 

── 介護者支援には何が必要でしょうか。

 

河村 「家族に代わる介護の担い手の確保」です。介護業界の人手不足は深刻です。人材確保のために、まずは介護職の処遇改善が必要です。また、ロボットやICTの介護現場への積極導入、外国人介護人材の活用なども必要です。ロボットやICTは、価格などの面で多くの人が気軽に使えない状況を早急に改善する必要があります。

 また、外国人については昨年、技能実習制度に介護が加わり、日本への在留資格に介護が追加されましたが、これでは全く不十分であり、もっと門戸を開くべきです。

 

 

── 公的サービスの拡充や介護職の処遇改善を進めると、財源確保が課題になりますが。

 

河村 消費税率10%への引き上げが見送りとなりましたが、社会保障財源の厳しさなどを考えますと、いつかは実施せざるを得ません。しかし、増税は国民の理解が必要です。給付と負担のバランスをとらないと、制度の持続性が危ういものになります。

 

 

── 社会保障財源が厳しい中で、今後、給付の抑制が進むとの見方もありますが。

 

河村 財源には限りがありますので、高齢者自身が、公助や共助に依存せず、自助や互助にも取り組み、自立し続ける意識を持つことが重要です。そのためには高齢者の自立を促し、高齢者が望むことを自分でできる介護の仕組みが必要です。

 先日、日本老年学会と日本老年医学会が、高齢者の定義を75歳に引き上げる提言を行いました。また最近では企業が定年を60歳から65歳に、あるいはそれ以上に引き上げる動きが広まっています。65歳でリタイアしてから75歳までの10年間を「支える側に回る」という考えがいかに定着するかで、今後の高齢化問題をスムーズに乗り切れるかどうかが大きく変わります。

 

 

── 地方創生に積極的に取り組んでいます。地方創生の観点から見た介護・福祉の問題点や将来展望などについて聞かせ下さい。

 

河村 地方を中心に人口減少が深刻です。これを少しでも食い止めようと、安倍政権でも「新3本の矢」で「希望出生率1.8」を掲げています。

 大都市部ほど「女性が自活できる仕事が多くあり、結婚・出産年齢が高くなる」「住宅事情の悪さ、保育園不足、生活費の高さなど、出産・育児に適した環境でない」などの理由で出生率は低下します。しかし、「仕事が無い」などの理由で、若者などが地方から大都市圏にどんどん移っています。この様な出生率の低い大都市部に人口が集中し、日本全体の出生率がさらに低下する、という悪い循環をくい止める必要があります。

 そのためには、大学を地方に移す、地方出身者が地元の大学に入った場合には奨学金の返済を免除する、などの施策が必要でしょう。そうして地方の人口流出を食い止めるとともに、地方移住を促進する必要性があります。そのためのキーワードが介護・医療です。

 

 

── 以前、民間有識者団体が「今の体制では、将来首都圏の医療・介護ニーズを支えきれない」として、地方移住を検討すべき、というリポートを発表して話題になりました。

 

河村 高齢者が地方に移住する際の心配点の一つが「医療・介護体制が十分かどうか」です。これは、地方の住民がその地方に居住し続けるかを検討する際も重要です。つまり、地域の医療・介護体制が十分でないと、地元の人も出ていってしまいますし、大都市圏から人を呼び込めないのです。

 

 

── 地方再生の成功例はありますか。

 

河村 鹿児島県の徳之島に伊仙町という人口7000人弱の町があります。2008年から2012年の期間合計出生率が全国平均の2倍近い2.81を記録して話題になりました。保育・子育て支援などの女性が働きやすい環境、活躍できる環境を整えているのはもちろんのこと、さまざまなケアをしっかりと提供しています。

 

 

── 他の自治体も学ぶ点は多そうですね。

 

河村 ただし、高齢化の状況、人口動態、保育所待機者の数など、自治体により状況は大きく異なります。地方創生には、各自治体が、それぞれの事情に応じてきめ細かい対策を立て、実施していく必要があります。国は介護保険制度改正の度に保険者機能を強化させる動きを強めています。更に地域包括ケアシステムにおいては、人口1万人、中学校の学区程度を一つのエリアとして想定しています。より地域の事情に即した住民ケアの考えが必要になります。

 一方で、一自治体で取り組むには限界もあります。そうした場合は、複数自治体で資源や人材・ノウハウを共有して取り組む「自治体間連携」が重要です。

 

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