新型コロナウイルスの感染拡大が止まらない。呼吸不全に陥り入院が必要とされる「中等症Ⅱ」に相当する患者の受け入れ先が見つからないケースが頻出しており、都内の自宅療養者は2万人を超えた。首都圏を中心に、いま何が起きているのか。菊池亮先生(ファストドクター・東京都新宿区)に、緊急インタビューを行った。

 

 

揺らぐ心と命、ここで支える
――7月半ば過ぎから感染者が爆発的に増加し、いわゆる「第5波」がやってきました。自宅療養の現状について教えてください。
東京都や大阪府など複数の自治体と提携していますが、東京が、第4波の頃の大阪のようになりつつあります。ただし、大阪の場合は重症化した患者が70歳前後の高齢者だったのに対し、いま我々が酸素投与している患者の平均年齢は37歳くらい。若年層の重症化が目立つのが最大の違いです。また、基礎疾患が少ない方の重症化も現実として感じています。自宅療養中の感染患者を管理している保健所からの診察依頼も含め、コロナ関連の問い合わせは6月から7月の1ヵ月間で10倍に増えました。

 

 

若年、基礎疾患なくても感染
保健所からの要請をもとに電話での診断やオンライン診療を行い、軽症と診断した患者は保健所に差し戻し、その後のフォローもお願いしています。
一方、重症化する危険性がある場合は、我々の方で24時間365日の健康観察を行います。呼吸困難や肺炎の症状が見られる中等症Ⅰの場合は1日3回、酸素飽和度が93%以下で酸素投与が必要な中等症Ⅱの場合は1日8回、電話での健康観察で健康状態の推移を測り、必要に応じて保健所と連携しながらオンライン診療と往診に切り替えます。

 

――中等症ⅠやⅡの人が急変するケースもあると言われ、多くの自宅療養者が不安を抱えています。
はい。実際、今月7日に往診した43歳の男性のケースでは、酸素を5リットル入れてもパルスオキシメーターの数値が80%くらいにしか上がりませんでした。低酸素状態が極まると、急にふっと意識がなくなったり意識障害が出たりして、そのまま死亡する原因にもなります。保健所に相談しましたがらちがあかず、救急車を3度呼んで、ようやく受け入れ先の病院が見つかりました。

 

入院調整の権限を持つのは保健所ですので、基本的には酸素投与が開始された、あるいは我々が健康観察を入れたタイミングで保健所に入院調整の依頼を始めます。しかし、保健所の対応能力が完全に限界を超えており、患者へのフォローアップの電話も2、3日に1回しか行われない状況が生じています。
もちろんそのまま放っておくわけにはいきません。在宅で投与できる酸素の流量は3〜5リットルですが、救急隊なら10リットルできるので、患者の生命が危なくなりつつある場合には、このように、やむなく自分たちで119を呼び、救急隊と連携して酸素投与を行うということも行なっています。

 

 

――自宅療養中にどのような症状が出たら要注意なのでしょうか。
パルスオキシメーターの数値が94%を下回る場合は注意が必要です。もともと数値が低い方は、普段と比べて低くなっているかどうかをチェックしてください。ご自宅にパルスオキシメーターがない場合は、呼吸回数を測ります。15秒間の呼吸数をカウントし、その4倍を目安にします。1分間に20回以上の頻呼吸は、体内の酸素需要が高まっているサインです。

 

37・5度以上の発熱があったり平熱より1度以上高かったりする状態が4〜7日ほど続く場合、もしくは3日ほど続いた熱がいったん収まったがそれから1週間ほどして再び発熱し、咳も出てきた、というような場合も肺炎を疑います。

 

 

「うつさない」意識を
――自宅療養中の患者と家族、そして私たち一人ひとりが心がけたいこととはどんなことでしょう?
可能な限り部屋を分け、十分な換気をし、飛沫感染するような距離での接触を極力避けることが、家庭内感染予防のためにできることの限界なのかなと思います。室内でも使い捨てのマスクをつけてください。
手指と手が触れた部分の消毒の徹底も重要です。ウイルスが付着した手でマスクや目元を触ることで感染する可能性があります。医療現場で「1処置1消毒」と言いますが、何かを触ったら消毒、という形で手指消毒を意識してください。
意外と忘れがちなのが、自宅療養中に寝たきりでいることで起こる体力の衰えです。可能であれば、感染対策を徹底したうえで、自室の中で足踏みするなど少し動いて、体力低下の予防に努めてください。

 

確かにワクチン自体は効果的で、打つことで自分が重症化しづらくなることはあるかもしれません。しかし、デルタ株に感染したワクチン接種者の体内ウイルス量は未接種者と同量とも言われ、ブレイクスルー感染も報告されています。
「自分は打ったからもう大丈夫」ではなく、それぞれが危険性を認識し、ほかの人の感染につながる行動を控える配慮が非常に大事ではないかと思います。

 

コロナ自宅療養者への点滴投与(提供:ファストドクター)

 

 

 

取材を終えて
長い一日の終わりに疲れをにじませながら、それでも伝えたい、と取材に応じる姿に頭が下がった。
国内初の新型コロナ感染者が確認されて、はや1年半以上。この間、医療体制は徐々に整ってきたように見えた。だが、後手後手と批判され続けた為政者の、現場まかせとその場しのぎの小手先対応は依然変わらず、相次ぐ緊急事態宣言と自粛要請は形骸化し、都市部の医療は崩壊している。
「感染症対策の法整備」を〝検討〞するべきタイミングは「いま」でなく、遅くとも、世界中でパンデミックの可能性が最初に指摘された時だったはずだ。
最悪の事態に目をつむり、「喉元過ぎれば」忘れてしまう〝ニッポン〞体質に強い危機感をおぼえる。「いま」必要なのは、即効性のある具体策と将来を見据えた抜本的なシステム作りではないのか。これは人災だ。

聞き手・文/八木純子

 

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