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有料老人ホームに地殻変動が起きている。厚生労働省の最新調査の2017年6月末時点で、「住宅型」の定員が25万840人となり23万6391人の「介護付」を追い抜いた。「住宅型」はこの6年間で2・6倍に増えており、今後差は広がっていくだろう。

特別養護老人ホーム(特養)の定員58万人には及ばないが、いずれ特養の入居者は重度の低所得者に限定されそうなので、サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)と並んで高齢者住宅の主役になりそうだ。両者はいずれも市町村の介護保険計画で新規開設が限定されないからだ。

なぜ「住宅型」がこれほど増えたのか。
「住宅型の入居者の平均要介護は2・7で、『介護付』の2・4より高い」という衝撃的な事実が判明した。野村総合研究所が17年に実施した調査による。
同調査から要介護3、4、5の中重度者の割合を見ると、「介護付」が合計41・1%なのに対し、「住宅型」は合計49・0%。重度になっても「住宅型」で十分暮らしていけるのである。

両者にケアのレベルの差はなくなると、次は利用料金で選択される。同調査では、外部サービス料金を除くと、「介護付」は月平均で26万2515円なのに、「住宅型」は半額以下の12万2202円だという。「介護付」には施設職員による介護サービスが含まれている。「住宅型」では、介護保険の在宅サービスを外部事業者から求める。1割負担なので要介護5でも3万5000円前後。その費用を加えても、約16万円となり、「介護付」より約10万円安い。

このような「住宅型」自体の変容のほかに外部要因もある。09年3月に群馬県渋川市で起きた、高齢者住宅「静養ホームたまゆら」で火災が起き、入居者10人が亡くなった事件だ。批判を受けて厚労省は「基準に達していなくても、有料ホームの届けを出させて定期的に検査するように」と方針転換し、指定権限を持つ自治体を指導する。
それまでは、各自治体は「有料老人ホーム設置運営指導指針」により廊下幅や個室要件、部屋面積などの基準を満たさなければ届出を受理せず、「類似施設」と命名し「継子」扱いだった。火災後は、普通の民家を活用した小さな集合住宅が次々「住宅型」として登録させられた。民家より少し大きいが、20室前後の建物にデイサービスや小規模多機能を併設する新規参入者も増えた。
もう一つの増加要因は、大手チェーンが「介護付」の予備軍として「住宅型」を揃えだしたこと。特定施設の基準に合わせて建物を作り、介護サービスも運営者で基準近く提供する。利用者には「介護付」との違いが分かり難いことが課題だが…。

浅川澄一氏 ジャーナリスト 元日本経済新聞編集委員

1971年、慶應義塾大学経済学部卒業後に、日本経済新聞社に入社。流通企業、サービス産業、ファッションビジネスなどを担当。1987年11月に「日経トレンディ」を創刊、初代編集長。1998年から編集委員。主な著書に「あなたが始めるケア付き住宅―新制度を活用したニュー介護ビジネス」(雲母書房)、「これこそ欲しい介護サービス」(日本経済新聞社)などがある。

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