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ACP(患者の意思決定支援計画)の存在や患者の権利が損なわれかねないメディアの報道ぶりだ。毎日新聞が7日の朝刊で報じた「スクープ記事」が波紋を広げている。「医師、死の選択肢提示」「透析中止患者死亡」「指針逸脱都、立ち入り」と1面トップで報じた。東京都福生市の病院で44歳の腎臓病女性患者に人工透析治療の中止の選択肢を示し、中止を選んだ患者が1週間後に死亡したという。
その日の夕刊から各紙が一斉に後追いし、テレビなど他メディアも大きく取り上げ、続報が続いている。

毎日は翌8日の紙面で「本人に判断迫るのは酷」「透析中止問題で患者団体」と、東京腎臓病協議会の事務局長の話をそのまま見出しとした。同日の夕刊では、別の患者の親族が、当の外科医から人工透析の中止の選択肢を話され、「『命を諦めろ』と言われたように感じた」として、やはり見出しで発言を載せた。いずれも、患者本人に判断させてはいけない、と主張しているようだ。
医師が医療処置の説明の中で、中止も加え本人に選択を求めるのは当然だろう。国が示した最新のACPでも本人の意思確認が第一としている。

「透析中止学会が調査へ」(7日の毎日夕刊)など毎日の先行に他メディアも、「透析中止4人以上死亡」(9日の朝日新聞)、「透析治療20人選ばず、亡くなった患者も」(8日の読売新聞)と追随。いずれも「生かし続けるのが医療」という思い込みが強いようだ。本人が死の直前に透析再開を要望したのかがあいまいのまま、病院が透析中止に追い込んだ論調には首をかしげざるを得ない。ただ、家族を含めた当事者との対話が不十分だったことは確かなようだ。

成年後見制度を2月6日から10回連載した朝日の記事は見逃せない。認知症についての議論で抜け落ちているのが同制度。後見人の指名や交代不可など現場からの苦情は多い。多くの問題点を網羅的に追いかけ、全体を俯瞰できる。
2月27日から3回連載した「知的障害者のみとり」も朝日の好企画である。みとりを想定していないグループホームでも、高齢化で避けられない課題だと気付かされる。

日本経済新聞が3月3日に「病院 減らぬ過剰ベッド」「過剰率が21%に上昇」と報じた。「過剰率が高いほど医療が高まる」と分析し、「病床再編を促す報酬を」と提案する。その通りだろう。

浅川澄一氏 ジャーナリスト 元日本経済新聞編集委員

1971年、慶應義塾大学経済学部卒業後に、日本経済新聞社に入社。流通企業、サービス産業、ファッションビジネスなどを担当。1987年11月に「日経トレンディ」を創刊、初代編集長。1998年から編集委員。主な著書に「あなたが始めるケア付き住宅―新制度を活用したニュー介護ビジネス」(雲母書房)、「これこそ欲しい介護サービス」(日本経済新聞社)などがある。

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