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---具体例で学ぶ介護施設の事故防止策---

「送迎ドライバーの体調管理」

あるデイサービスから、「送迎車のドライバーが、運転中に脳梗塞の発作で電柱に衝突し、利用者が亡くなった。今後の対策で悩んでいる」と相談を受けました。「ドライバーは高血圧症だったらしいが、高血圧症の人は雇わないという訳にもいかない」と言うのです。私は「事故当日の体調はどうだったのですか?記録はありますか?」と尋ねましたが、「始業前点検はやっていたらしいけど、車の点検はできても脳血管の点検はできないし」とやや自嘲気味です。送迎車ドライバーの体調管理に関して、どのように取組めば良いのでしょうか?

■防げなければ何もしなくて良いか?
持病の発作を防ぐことは誰にもできませんが、事故を起こしたドライバーは業務開始時にいつもと同じ体調だったのでしょうか?脳梗塞発作の兆候はなかったのでしょうか?本当は脳血管障害の自覚症状があったのに、申し出なかったかもしれません。体調不調を申し出て血圧を計っていれば、送迎車の運転を断念したかもしれません。

脳血管障害の発作は多くの場合直前には血圧上昇による頭痛やめまいなどの自覚症状が現れます。もし送迎業務前の健康チェックという管理体制があって、健康チェック表を記入したらどうでしょう。「朝から頭が重くてめまいがするんだ」と本人が申し出て、看護師が血圧を測定して収縮期血圧が180だったら、看護師はすぐ所長に言って送迎業務を中止させたでしょう。人の体調に関わるリスクを予測して未然に防ぐのは難しいですが、間際で察知することはできます。
経営者は大きな事故が起きたとき、事故の不可抗力性が高いと「防ぎようがない」と言い訳をしますが、たとえ、不可抗力性の高い事故であっても、何も防止対策を講じていなかったのか、できる防止対策をきちんと講じていたのに防げなかったのかが問題なのです。

■高齢ドライバーの健康起因事故防止対策
さて、高齢ドライバーの健康起因事故が大きな経営課題になっているのは、バスやタクシーなどの運送事業者です。2018年6月に国土交通省は、バスドライバーの相次ぐ「健康起因事故」の防止のために、運送業界に対して「健康起因事故の防止に向けた健康管理の実施について」という通達を出しました。これを受けてバス・タクシーなどの運送事業者では、「事業用自動車の運転者の健康管理マニュアル」を活用した取組みが行われるようになりました。

取組みの柱は「健康診断による運転者の健康状態の把握」と「乗務前点呼による乗務判断」です。
特に重要なのは、乗務前点呼時の健康チェックによる乗務判断で、健康状態のチェック表を使用して、乗務に支障があるような健康状態の運転者に対しては、乗務を中止させているのです。健康チェック表は、一般的な問診項目の他に脳疾患や心疾患の持病がある人に対して詳細なチェックを行うように作られています。このようにして、運転業務に支障があるような健康状態のドライバーを、水際で排除して大事故を回避しています。

■デイサービスでも健康起因事故防止の取組みを
デイサービスの送迎車ドライバーは、二種免許を取得しているプロのドライバーではありません。しかし、多数の人を安全に輸送するという意味においては、タクシードライバーと同じ安全運転の能力が求められますし、事業者にも同レベルの管理体制が求められます。看護師が配置されているデイサービスであれば、健康チェックや乗務判断について運送事業者に比べより適切な対応ができます。

介護事業を円滑に運営するためには、要介護者の輸送手段が必要になりますから、デイサービスの送迎ドライバーなどの輸送の担い手が急増しました。しかし、事業者の安全運行管理体制は全く追いついていません。利用者を送迎車から降ろし忘れて駐車場に放置して熱中症で死亡させるという、常識では考えられない事故も起きているのです。送迎車の安全管理を一から見直すべきではないでしょうか?

 

安全な介護 山田滋代表
早稲田大学法学部卒業と同時に現あいおいニッセイ同和損害保険株式会社入社。2000年4月より介護・福祉施設の経営企画・リスクマネジメント企画立案に携わる。2006年7月より現株式会社インターリスク総研、2013年4月よりあいおいニッセイ同和損保、同年5月退社。「現場主義・実践本意」山田滋の安全な介護セミナー「事例から学ぶ管理者の事故対応」「事例から学ぶ原因分析と再発防止策」などセミナー講師承ります。詳しくはホームページanzen-kaigo.comで。

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