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「高齢者住宅運営居室数ランキング」は、今年もSOMPOケア(東京都品川区)、ベネッセスタイルケア(同新宿区)、ニチイ学館(同千代田区)の3社が上位となった。この3社に今後の事業戦略などについてインタビューした。

■SOMPOケア■

研修充実で離職率低下
「現場任せ」教育から脱却

統合から1年 足場固め進む

---グループ4社統合から1年が経ちました。現在の状況は。
遠藤 ようやく落ち着いた感があります。旧SOMPOケアメッセージも、旧SOMPOケアネクストも、前身の会社時代を含めて長い歴史があり、介護業界で多くの実績を有しています。前者は創業者が医師、後者はサービス業が母体と企業の成立ちが異なり、ケアに対する考え方にも違いがありました。そうした会社を1本化するために、実際の統合の半年前に経営理念や行動指針を発表、3ヵ月前に地域本部制を敷くなどしていきました。

---現在、特に力を入れて取り組んでいることは。
遠藤 スタッフ研修です。2 0 1 6 年東京に、18年大阪に研修施設を開設しました。現在、年次別研修・職能別研修などほぼフル回転で稼働しています。
介護現場での研修というと、先輩スタッフによるOJTが一般的だったと思います。しかし、先輩スタッフ自身が、後輩スタッフを指導するための教育を十分に受けていない、などというケースも多くありました。しかも教育する側も現場業務に入りながらですから、しっかりと腰を据えた形での教育は難しいものがありました。言葉は悪いですが、スタッフ教育は「現場任せ」という会社が多かったと思います。
当社では、教育研修部を設け、ここだけで各分野・業務の専門スタッフ54人を抱えています。こうした密な研修を行うことにより、離職率が低下するなど目に見えて効果が出ています。

建物所有者との契約期間満了へ

---高齢者住宅の新規開設の状況は。
遠藤 企業統合など、体制の整備に力を注いでいたこともあり、ここ数年はゼロですし、この先も具体化している新設案件はありません。ただし既存の高齢者住宅については建て替えや、移設などもあり得ます。

住宅の建替え・移設検討
当社は、2000年の介護保険制度の開始前後に開業した高齢者住宅を多く抱えています。建物所有者との間の賃貸借契約期間は20年間ですので、今年から21年ごろにかけて、契約期間満了を迎える住宅が多数あります。それらについて、個々に今後どうするかを検討しています。
中には、建て替えたり、近隣に移転したり、統合させたり、建物を当社で買い取ったりなどといったケースもあり得ます。実際に、岡山県で別々の場所にあった、介護付きホーム(特定施設)とグループホームを同一敷地内に集約させる形で移転したケースもあります。住宅の閉鎖や廃止などボリュームを現状より少なくすることは考えていませんが、ベストと思われる新たな方法を考えていきます。

---仮にですが、今後新設するとして、住宅の類型や価格帯などはどのようなものが理想ですか。
遠藤 類型については、介護付きホームが住まいとケアが一体化しており、利用者にとってもわかりやすいという点で理想的と考えています。価格については、同業他社では高価格物件に力を入れていく傾向が強くなっています。確かに収益性という点でいいでしょうし、当社のラインナップの一つに加わるのもありだと思います。しかしSOMPOグループ全体の企業イメージからしても、あまり高価格なものに注力、というのはそぐわないのではと考えています。

---大きなM&Aを2回行って業界に参入してきた経緯がありますが、今後のM&Aの可能性は。
遠藤 今のところはありません。参入当初は、介護事業全体のバランスを考えると在宅系サービスの比率をもっと高めた方がいいという考えもありました。しかし実際に旧ジャパンケアの在宅サービスを運営してみて、人材の確保やオペレーションなど住宅系サービスに比べて難しい部分が多いと実感しています。

---このほか、社として力を入れていきたいことは。
遠藤 IT活用です。今年2月都内に「フーチャー・ケア・ラボ・イン・ジャパン」という国内の介護に関わる最新テクノロジーの実証などを行う研究所を開設しました。様々なメーカーのIoT機器やロボットなどの開発・実用化をサポートするだけでなく、ここで生まれた製品を当社が運営する高齢者住宅へ積極的に導入し、差別化を図って行きたいと考えています。

 


■ベネッセスタイルケア■

高級物件都心以外でも
9月には九州に初進出

処遇改善進め
欠員ほぼゼロ

---今後の高齢者住宅事業展開について教えて下さい。
滝山 年間で10棟ペースの開設を進めていきます。2年ほど前より「ハイエンドの住宅を都心部以外でも」というコンセプトで物件の開発を進めています。例えば、今年9月にはさいたま市の武蔵浦和駅近くに住宅型有料老人ホーム「浦和成匠邸」を開設します。40・3平米の居室1人入居で、入居金ゼロプランの場合、月額94万1700円(税別)となります。
また、社として初めて九州で開設します。
9月に福岡市で「メディカルホームグランダ高宮」を開設します。当社は、価格帯の異なる複数のブランドの高齢者住宅を展開しており、一定範囲の地域内で複数ブランドを運営することで、多くの人達のニーズに応えるドミナント戦略をとってきました。九州については、都内ほどの密なドミナントは難しいでしょうが、今回開設の「高宮」中心に5ホーム程度の展開を考えています。

---ここ数年、スタッフの処遇改善に力を入れてきました。
滝山 2 0 1 7 年度に、介護福祉士手当をこれまでの月3000円から1万5500円に引上げたほか、特にスタッフ確保が難しかった東京都世田谷区で地域手当を拡充するなどしました。目指したのは「スタッフの欠員ゼロ」です。これらの施策が奏功し、離職率も低下。2018年4月に欠員をほぼゼロにすることができました。10月には特定処遇改善加算がありますが、これを原資にして、新たな人事制度を立上げる計画です。
当社は介護は単純労働ではなく、高い専門性をもった仕事である、と考えていますが、これまではそれを具体的に「言語化」で
きていませんでした。今後は社としてそれを進めていきたいと考えています。詳細は未定ですが、新たな社内資格の創設なども考えています。

介護のIT化 慎重に判断を

----介護業務のIT化などについては、どのように考えていますか。
滝山 各種IT機器やロボットなどの有用性などについては十分に理解をしています。ただし、「実際にそれをホーム運営の現場でどのように活用すれば、サービス品質を下げずにスタッフの労務負担軽減などにつながるのか」という点での検証が十分に行われていません。
例えば、各居室にセンサーを設置すれば、スタッフの夜間の見守りの回数や時間は削減できるでしょう。しかし複数のセンサーが異常を察知し一斉に発報したら、スタッフはどのように対応すべきなのか、などといった部分でまだ答えが出せていません。単純に「スタッフの業務をそっくりITやロボットに置き換える」という形での導入は考えていません。

「引き算」で業務効率化
---では、スタッフの業務効率の改善は、どのような形で図っていきますか。
滝山 「引き算」で業務をスリム化することです。例えば、各ホームで行っている業務の中には「昔からの慣習で何となく行っているもの」「時代に合わなくなってきているもの」もあるはずです。そうしたものを洗い出し、それを行う必要があるのかどうか検討し、不必要なものは思い切って省くことで業務のスリム化を図ることができます。
社として「引き算で業務のスリム化を図りましょう」というメッセージは各事業所に出していますが、具体的にどのようなことを行うか、は各事業所の判断に任せています。

---配食事業も行っていますが、現状は。
滝山 5年前に埼玉県志木市に工場を設け、一般在宅の高齢者などに向けた配食サービスを行っていますが順調に伸びています。またここで製造した食材は、当社のホームの厨房委託先の事業者にも卸し、ホーム入居者にも当社が製造した安心・安全な食材を食べてもらえる環境を整えています。
配食サービスは「ドアオープナー」としての役割が非常に大きいです。独居などで外部社会との繋がりが少ない高齢者でも、配食をきっかけに当社や外部社会とつながることができます。いくら当社が良質な高齢者住宅を供給しても、そこと地域の高齢者がつながらなくては意味がありません。その点でも、このサービスについては引き続き注力していきたいと考えています。

 


■ニチイ学館■
在宅系サービスに注力
〝AIでケアプラン〞開発中

首都圏対象に年間数棟開設

---ニチイ学館グループ全体における、介護事業の位置づけは。
黒木 昨年、グループの中期経営計画「ビジョン2025」を発表しました。その中で基幹事業、つまり介護・医療・保育の3事業を主軸とすることを打ち出しています。その中でも介護事業は売上高が最も多いこともあり、今後、さらに力を入れていきます。

---貴社は、訪問、通所、高齢者住宅と幅広い介護事業を展開していますが、中でも今後特に注力していく分野は。
黒木 在宅系サービスです。売上高ベースでは現在、在宅系サービスが約6割、居住系サービスが約4割ですが、今後は、さらに在宅系の比率が増すことになると思います。

---なぜ、在宅系サービスなのですか。
黒木 居住系サービスは、投資資金回収に時間がかかるのがネックです。ただし、ニチイケアパレスが運営する「ニチイホーム」は、首都圏内であれば今後もニーズが見込めますので、年間2〜3棟程度の開設を考えています。今年10月1日には東京都渋谷区で1棟新設予定です。
また、グループホームについてもニーズは実感しており、自治体の公募状況を見ながら増やせていければと思います。

---介護事業拡大の上では、人材確保が大きな問題ですが、その対策は。
黒木 当社の場合は、介護資格取得のための教育講座を行っており、その受講生の3割が当社で就労しています。ここである程度の人材確保は見込めますが、当社に限らず業界全体で教育講座の受講者数が伸び悩む傾向にあります。そのため今後は離職をいかに防ぐか、などといったことに注力していく必要があると考えています。そのためにスタッフの処遇改善など、働き方改革を進めています。例えばニチイホームの約半数で、これまでの夜勤とは異なる一勤務9時間の短時間夜勤を設け、スタッフが自由に選択できるようにしています。

---外国人人材活用については。
黒木 7月22日に6名の中国人技能実習生が来日しました。1年間の就労後は当社の中国事業所で勤務する予定です。技能実習については、実質的には労働力確保の方策という側面が強くなっていますが、本来の目的は技術移転です。それに即した形での活用をしていきます。
特定技能については、現在のところ様子見です。訪問系サービスが対象外になっているなど、実際に介護の現場で活用していくには効果の面などで疑問が多いのではないかと感じています。

中国の介護事業 リハビリがカギ
中国で高齢者住宅 来年200室受託予定

---中国事業の話が出ましたが、現状は。
黒木 大連と北京で高齢者住宅の運営を受託しています。北京については、現在運営を受託している物件の隣地に来年200室の要介護者向け高齢者住宅が開設される計画で、一気に規模が大きくなります。そこの運営も受託予定です。

---実際に中国で事業を行ってみて、両国のニーズの差などは感じますか。
黒木 中国は、高齢者を敬う文化なので、歩けない高齢者がいたときに「リハビリで歩けるようになってもらおう」よりも「自分たちがお世話をしよう」と考えます。日本の介護サービスが中国で根付くかどうかは、自立支援やリハビリに対する考え方がいかに受け入れられるかによるでしょう。また、現地では認知症ケアに対するニーズが高いと実感しています。中国での事業展開については、こうしたニーズにうまく応じていくことが重要だと考えています。

----IoTやロボットの活用についてはどのように考えていますか。
黒木 ニチイホームでは、年内中にも介護記録のICT化を完了させる予定です。また、AIによるケアプラン作成システムの開発にもNECと取り組んでおり、将来は外部への販売も考えています。
ただしAIによりケアマネジャーが不要になるとは考えていません。開発中のシステムはAIがどのような根拠でそのケアプランを作成したのかがわかる「ホワイトボックス型」です。ケアマネが、AIによるケアプラン作成の過程を知ることで、自身のケアプラン作成能力の向上につながるものと思われます。このような形で、導入コスト・効果などのバランスを考えながら人の手とIoTなどをうまく使い分けていきたいと考えています。

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