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---ヘルスケア×カルチャー 変貌する医療と福祉---

余命宣告受け「人生再編集」の旅
女性ふたりの友情物語

 

映画「最高の人生の見つけ方」

このタイトルをご覧になって、2008年に公開されたオスカー俳優のジャック・ニコルソンとモーガン・フリーマンの大ヒット映画を思い出される方も多いだろう。そう、今回はそのリメイク作品を、現代にマッチした女性二人の物語として、吉永小百合と天海祐希の共演で蘇った。人生を家族のために捧げてきた主婦と、一代で事業を成功させ大金持ちとなった女性社長という、異なった世界で生きてきた二人が偶然に導かれ、お互いの共通点を知る。それは、〝余命宣告〞だった。最期を目の前にして二人が決断したことは、思いがけず手にした「死ぬまでにやりたいことリスト」に挑む旅だった。

 

 

主人公の幸枝を演じる吉永小百合は、主婦としてひたすら家族のために尽くしてきたが、退職してもいまだ世話のかかる夫と引きこもりの息子のために明け暮れる日々。この呪縛のような日常から思い切って飛び出し、〝人生で初めて〞に、生き生きと果敢に挑戦する姿は、これまでのイメージとは一味ちがった新たな彼女の魅力と出会える。

 

 

天海祐希演じるマ子は、自身の人生に価値を求め、ホテルチェーンの経営者として上り詰めた。しかし、生き急ぐ自身とは正反対の価値観で生きる幸枝に出会って、大切な時間をどこかへ置き忘れてきたことに気づきはじめる。心の奥に潜むナイーブな一面も覗かせながら、経営者としての豪快さと、セレブの華やかさを見事に演じている。

 

 

共感を覚えるのは、残り少ない時間を、二人がそれぞれ人生の帳尻を合わせるかのように、本来の自分を取り戻しにいくこと。一生は、気がつくとあっという間に過ぎてしまっている。
だから、夏休みの終わりに、絵日記の宿題を慌てて仕上げるように、最期、自身の物語にドラマティックなハイライトシーンを施し再編集することがあったっていい。

 

 

本作は、コメディタッチでありながら、物語の背景に、現代社会が抱える問題を垣間見る。
幸枝が、しっかり者の娘、美春(満島ひかり)にだけ、余命わずかだと伝えるシーンがあるが、これは最も日本的なパターンだ。男は役に立たず、なぜか娘、女性が全てを背負ってきたが、これから多死社会を控えるわが国において、憂いをそそられる。

 

日本人はこれまで、「死」はタブーであって、死生観を言葉にしてこなかったが、これからは、夫婦のみ、一人暮らしが全世帯の30%を占めるなかで、支えるのは家族ではなく、地域の役割となり、「人生会議」も必要だ。思いがけない共有が、いつしか共感を覚え、やがて主体的に何かをしたいと思い、行動する。本作は、一見、現実離れをした物語に見えるが、ところどころに、お手本が隠されている。いろんな最期があっていい。自身の人生の物語は、自身が望む幕引きで。

 

 

小川陽子プロフィール
日本医学ジャーナリスト協会副会長。国際医療福祉大学大学院医療福祉経営専攻医療福祉ジャーナリズム修士課程修了。同大学院水巻研究室にて医療ツーリズムの国内・外の動向を調査・取材にあたる。2002年、東京から熱海市へ移住。FM熱海湯河原「熱海市長本音トーク」番組などのパーソナリティ、番組審議員、熱海市長直轄観光戦略室委員、熱海市総合政策推進室アドバイザーを務め、熱海メディカルリゾート構想の提案。その後、湖山医療福祉グループ
企画広報顧問、医療ジャーナリスト、医療映画エセイストとして活動。2019年より読売新聞の医療・介護・健康情報サイト「yomiDr.」で映画コラムの連載がスタート。主な著書・編著:『病院のブランド力』「医療新生」など。

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