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認知症への支援 深耕の年

 

「認知症の人と家族の会」副代表理事 花俣ふみ代氏に聞く

 

2020年は認知症基本法が制定される見通しで、認知症対策は新たな段階へ進む。これに先立ち、国は昨年6月に「認知症施策推進大綱」を公表。「共生と予防」を柱にした5年間の方針を打ち出した。18年時点で「高齢者の7人に1人」が認知症とされ、その数は今後さらに増えることが懸念される。法律化の意義をいかに受け止め、今後の課題をどう考えていくべきか。当事者の視点から花俣ふみ代氏に語ってもらった。

 

 

本質の課題は共生社会

――今年は認知症基本法が制定される見込みです。どう位置付けられますか。
基本法自体は概念を中心に定めた「理念法」ですが、昨年6月に策定された「認知症施策推進大綱」(以後「大綱」)が実効性を持ち、具体的な取り組みが動いていくことは歓迎すべきだと思います。

 

 

 

――大綱では、「共生と予防」を旗印に施策を進める姿勢を国が打ち出しました。
大綱は15年の「新オレンジプラン(認知症施策推進総合戦略)」に替わるものですが、当事者の立場からは、予防の観点が新たに盛り込まれたことによって、認知症の人や支える家族に対する支援の必要性に関する部分が薄くなった印象を受けています。

 

大綱案の検討段階では「予防と共生」と記され、予防ありきの印象がさらに強いものでした。認知症はなってはいけないもの、予防できるもの――つまり自己責任論になりかねないと危惧しました。予防を偏重すれば「認知症になるのは予防してこなかったから。自分が悪いんですよ」といった風潮や新たな偏見が生じかねません。

 

「認知症になっても安心して日常生活を過ごせる社会を目指そうよ」。それが共生の考え方です。従来からの理念を継続するためにも、私たちを含めた当事者団体が働き掛けて最終的に「共生と予防」という表記に変わりました。

 

 

 

――認知症対策にとって共生こそが本質であると。
「認知症の予防」も、一般の人には誤解を与えかねない問題があります。そもそも認知症の原因疾患は、アルツハイマー病、レビー小体型、脳血管性等々、様々なものがあり、原因疾患によって認知症の症状や対応も違います。にもかかわらず、これまでは「認知症」というざっくりとした枠で最大公約数的に語られてきました。一歩進んだ対策のためには、本当は原因疾患別の理解や棲み分けが必要です。

 

誤解があってはいけないのですが、認知症分野の医療の進歩には当事者も期待しています。認知症の当事者にとって有効な治療薬や治療法の実現は切実な願いですから。それゆえ「予防ありき」に偏らない施策を期待したいです。

 

 

――大綱の中で5本目の柱として「研究開発・産業促進・国際展開」があります。
細かくは「評価指標の確立」「研究開発の成果の産業化」など、経済活動的な表現が多く、当事者の立場としては違和感が拭えません。
ざっくばらんに言えば「結局、ここでもそろばん勘定なのか」という印象です。

 

 

――普及啓発や「認知症バリアフリー」の推進は、具体的にどう進めていくべきでしょうか。
率直に言うと、従来の「オレンジプラン」と大きな変化がありません。本人や介護者支援に関して、具体策としては「認知症カフェや認知症サポーターの数を増やしましょう」といったレベルでとどまっています。

 

ただ、現場の実情を言えば、たとえばカフェは、一種の乱立状態で単なる高齢者サロン化や「ミニデイサービス」みたいな感じで、「当事者や家族が安心できる場所づくり」という本来の機能を果たしていないケースも、結構見受けられます。

 

認知症バリアフリーも、地域やコミュニティーづくりの支援といった理念的な目標が多く、それで具体的な介護者支援が完結するかと言われると少し違うなと。こうした部分は私たちのような民間が主体的に取り組めるもので、大綱としては、国や行政が手を差し伸べなくては実現しないような施策をきちんと示していくべきではないでしょうか。
当事者側からは「介護者支援法」のような具体化を求める声も出ています。

 

 

――21年の介護報酬・制度改定が進んでいます。社会保障審議会の委員として、議論の最前線の感想は。
介護保険制度の要介護認定は、身体モデルがベースで、認知症項目はごくわずかに限られています。ですから認定は低めになりやすい。この点に関し、一番重要なのは「動ける認知症の人」の介助や日常生活への支援が最も負担が大きいという現実です。ショートなど施設利用も、認知症の人の場合は未だにハードルが高い状況もあります。

 

 

――今回は見送られましたが、社保審では要介護1と2の人の生活支援を市区町村の総合事業に移す案が議題に挙がりました。
要介護1、2の人の中には認知症の人が圧倒的に多い。動ける認知症の人のケアが一番難しいことも踏まえると、総合事業移管は論外だと反対しました。認知症の人の抱える困難や支える家族の大変さは、まだ行政にさえ伝わっていないのが現状だと思います。

 

認知症の確定診断を受けた人に加え、認知機能の低下のある軽度認知障害(MCI)の人が急増する中、介護保険制度の枠組みだけで支えるのは難しい。ですから共生社会や地域住民の理解・支援が大切ですが、だからといって、国や行政が介護や医療の給付を絞り込んで自助や共助に過大な負担を求めるのも間違いです。
介護保険制度との関係も含め、20年が認知症対策をより深く考える節目の年になってほしいと期待しています。

 

認知症施策推進大綱 「5本の柱」
①普及啓発・本人発信支援
②予防
③医療・ケア・介護サービス・介護者への支援
④認知症バリアフリーの推進・若年性認知症の人への支援・社会参加支援
⑤研究開発・産業促進・国際展開
(令和元年6月18日関係閣僚会議資料より抜粋)

 

 

 

「認知症の人と家族の会」副代表理事
花俣ふみ代氏
介護福祉士。介護支援専門員。公益社団法人「認知症の人と家族の会」副代表理事、埼玉県支部代表。社会保障審議会介護保険部会委員。1991年~98 年に義母を在宅介護、1998 年~ 2003年には実母を遠距離介護した。

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