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 次期介護保険報酬・制度改定で住所地特例が議題にあがっているが、その流れで日本版CCRCの今後にも注目が集まる。しかし、CCRCを本質的に考える有識者からは従来の官主導型のモデルが誤解を招いている側面を指摘する見解もある。三菱総合研究所に松田智生主席研究員に話を聞いた。

 

 

──日本版CCRCの現状をどう見るか。

日本におけるCCRCには2つの側面がある。一つは、2015年に発足し、私も委員として参加した「日本版CCRC構想有識者会議」の議論だ。政府の地方創生政策の柱となる施策に位置付けられ、本会議の最終報告では「東京圏をはじめとする地域の高齢者が、希望に応じ地方やまちなかに移り住み、多世代と交流しながら健康でアクティブな生活を送り、必要に応じて医療や介護を受けることができるような地域づくり」を目指すと定義された。そのため、日本版CCRCは「都市部の高齢者の地方移住」や介護保険制度の住所地特例とセットで語られることが多くなってしまった。

 

 

──東京都杉並区と静岡県南伊豆町による特養の設置などが「モデル」とされた時もある。

CCRCの原義は、高齢者の生活の質を高める新たなライフスタイルであり、都市部の要介護の人に地方へ移住してもらうことではない。だが杉並区の事例などから、官主導型の日本版CCRCは現在も「介護問題を地方移住で解決する手段」といったイメージが根強く残っている。これは日本版CCRCが地方創生政策に位置付けられたことで生まれた誤解のひとつと言えるだろう。

 

 

──日本版CCRCのもう一つの側面とは。

CCRCの本質は、①健康・介護支援、②適切な生活・介護コスト、③居住者のつながり・生きがい、の3要素が充足されていること。言い換えれば「カラダの安心」「おカネの安心」「ココロの安心」だ。この3つの安心が担保されていれば、都市部・近郊・地方のあらゆる場所でCCRCは成立する。企業や社会福祉法人が主導してきた「民間主導型」のCCRCが、より本質に近い取り組みといえる。サービス付高齢者住宅や有料老人ホーム、分譲マンションの単体による「施設型」のほか、限定的な地域を対象にして地域内への集住を想定した「エリア型」、地域全体をネットワーク化した「タウン型」など、地域特性を生かした多様なあり方がある。

 

 

──日本版CCRCに関する政策を軌道修正するには。

この5年間が官主導の「CCRC1・0」とすれば、これからの「CCRC2・0」は、本質に立ち返り、ユーザー本位の「新たなライフスタイル」として、民主導で普及していくべきだ。単なるハードとしてのビジネスではなく、ソフトも含めたあり方がポイントだ。例えば、プロスポーツチームのスタジアムに隣接した「プロ野球・Jリーグ連携型CCRC」、老舗旅館や名門ホテルのブランド、施設、ホスピタリティーを生かした「旅館・ホテル連携型CCRC」など色々なアイデアが進展している。
さらに、事業主体には、介護保険報酬に依存したビジネス設計ではなく、「介護にさせないこと・ならないこと」をビジネスにする逆転の発想も求められる。米国のCCRCの場合、公的な介護保険がないため、重介護者が増えれば事業主体のコスト負担が経営の圧迫材料になる。ゆえに、健康寿命の延伸のために、予防医療、運動、食事、生涯学習が緻密にプログラム化され、そうした取り組み自体がそのCCRCの魅力と価値にもなる。

 

 

──21年度介護報酬・制度改定に向けた社会保障審議会による論点整理の中で、日本版CCRCへの言及もあるが、住所地特例制度の見直しレベルでしかない。

介護保険との関係では仕方ないだろう。ただし、大局的な高齢社会対策としては、行政側も発想を転換し、CCRCの新たなあり方を考えるべきだ。事業主体の参入を促す上では、現行制度下で事業主体に課せられる役割軽減や規制緩和、参入障壁を下げること、減税や補助インセンティブ、規制緩和なども必要だ。
特に今後はひとつの事業主体がリスクを全て負うのではなく、官民連携の街づくり会社や共同出資法人での推進も大切だと思う。その方がリスクをヘッジしやすく、参入のハードルも下がる。CCRCが持つべき機能面からも、不動産、健康支援、IT、資産運用、生涯学習といった多様な企業にビジネスチャンスがあり、彼らがCCRCビジネスに参画することは望ましい。
一方でCCRCの普及に伴い劣悪な事業ケースも出てくる恐れがあるため、中長期的にはユーザー視点、消費者保護の視点から、CCRCの認証規格制度の創設も考えなくてはならない。

 

 

 

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