実効的な防止策、急務に

 厚生労働省が昨年末に発表した統計によると、全国における2018年度の介護施設の職員による高齢者への虐待行為は、過去最悪の621件を記録した。行政側からは「社会的な関心が高まり、通報件数も増えた結果」(担当者)との指摘もあるが、621件で被害者は927人にのぼる。一因には深刻な現場の人手不足による職員のストレスなども指摘されており、施設管理者は人事マネジメントの観点で問題解決を考える必要がある。

 

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研修契機に職員意識向上

「とても恥ずかしいことですが、虐待防止の基本的な知識が不足している職員がいることが研修で分かりました」。そう語るのは、社会福祉法人小茂根の郷 特別養護老人ホーム東京武蔵野ホーム(東京都板橋区)の稲田寛美所長。

 

 

同施設は18年、虐待・身体拘束廃止委員会を発足。創設以来、虐待の発生や身体拘束とは無縁だったが、18年度の介護報酬改定で「身体拘束廃止未実施減算」が導入されたため、委員会を立ち上げた。

 

 

18年7月、虐待・身体拘束に関する知識について、アンケート調査を全職員49名に実施したのだが、そこで改めて高齢者虐待防止に関する職員の知識不足が明らかになった。稲田所長が特に問題視したのは、「虐待の通報先を知っているか」との設問に対し、半分近い24名が「いいえ」と回答したことだ。「職員の回答も衝撃的でしたが、それ以上に私たち管理職自身も『職員は虐待防止の知識をしっかり理解している』と、漠然と思い込んでいたのです」と稲田所長は振り返る。

 

虐待防止 意見交換

「虐待を発見したら通報しなければいけない」。それを職員が理解していても、「実際にどこに連絡するか」という具体的な対策が分からなければ、実効性のある防止策とは言えない。そこで、稲田所長は、パートタイマーも含めた全職員に対し、基礎から重点的に研修を徹底。ただし、1回当たりの研修時間を15分程度とし、全員確実に受講してもらう工夫をしている。

 

 

研修は意外な効果も生んでいると稲田所長は説明する。単に研修を聴くだけでなく、職員間で問題を共有したり、積極的に話し合ったりする機会が増えたことで「今までよりも相談しやすい職場環境になった」との意見も数多く聞かれるようになった。

 

「若手職員が先輩に入所者への接し方など相談しに行く姿が以前より頻繁に見られるようになり、虐待防止のための雰囲気づくりにも役立っています。職員同士で自主的にしっかり指摘し、注意できる職場になってきたと思います」(稲田所長)

 

 

経営視点が必要

施設や職員側の理解が進む一方、これまでほかの施設などで拘束されていたり在宅時に拘束していた経験などから、身体拘束を家族自身が施設や職員に希望するといったケースも少なくない。ケアの大変さに疲弊する現場職員のマネジメント、間接的ながら家族からの「虐待」の要望——施設のトップが直面するジレンマは深い。

 

 

 

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