連載第50回 経営実態調査・収支差率の重要性

 昨年12月、「令和元年度介護事業経営概況調査の結果」が報告されました。今回は、概況調査において発表された各介護サービスにおける収支差率について論考していきます。

 

 

この収支差率こそが、介護報酬改定における報酬単価の増減に最も影響を与える指標であり、介護事業者は注視しなければなりません。今回の調査結果を見ていくと、全サービス平均は3.1%。前回より0.8%のマイナスにはじまり、全22サービス中15サービスが前回よりマイナスの結果となっています。

 

 

2018年度の介護報酬改定を踏まえた上での前回調査と今回調査の結果なので、前回対比での収支差率のマイナスは報酬改定による影響ではなく、各介護事業者の足元の収益力が確実に低下していることの裏付けです。

 

推測される主たる要因は、介護人材不足に伴う、人件費、採用費、労務管理費等の人材に係る費用の増加にあると考えられます。この結果の評価は難しい側面があり、介護事業全体の収支差率の悪化は好ましい情勢とは言えないものの、報酬改定への影響に鑑みると介護事業者には好ましい結果とも捉えられます。

 

 

サービス毎の結果では、全体平均より1%以上の収支差率となっているのは、訪問介護4.5%、訪問看護4.2%、福祉用具貸与4.2%、定期巡回・随時対応型訪問介護看護8.7%、夜間対応型訪問介護5.4%、認知症対応型通所介護7.4%、グループホーム4.7%、看護小規模多機能型居宅介護5.9%。この結果を参考にするならば、これらサービス分類は厳しい次期改定も想定されます。逆に過去2回の改定で大幅な報酬減となった通所介護は3.3%、地域密着型通所介護は2.8%との結果になっています。

 

 

しかしながら、この5月に介護事業経営実態調査が行わる予定であり、そこで発表される収支差率の値こそが次期報酬改定における最も重要な判断指標となるので、今回の概況調査の値はあくまで参考数値です。実態調査を適切な調査結果へと導くためには、2つの点に留意しなければなりません。

 

1つは有効回答率の向上です。今回の概況調査の回答率は48.2%であり、全体の半分以上の事業所が回答していません。余裕がなく経営状況の苦しい事業所ほど回答への手間を惜しむ傾向にあるため、有効回答率の向上が正しい数字の反映に繋がります。2つめは、経費の記載漏れを防ぐことです。とりわけ本部経費の事業所案分や、借入金の利息についての経費項目も確実に記載しなければなりません。5月の経営実態調査に向け、上記2点を情報発信していくことが重要です。

 

 

斉藤正行氏
2000年3月、立命館大学卒業後、㈱ベンチャーリンク入社。メディカル・ケア・サービス㈱の全国展開開始とあわせて2003年5月に同社入社。現在の運営管理体制、営業スキームを構築し、ビジネスモデルを確立。2005年8月、取締役運営事業本部長に就任。2010年7月㈱日本介護福祉グループ副社長に就任。2018年4月㈱ピースフリーケアグループ代表に就任。2018年6月、介護業界における横断的・全国的組織となる一般社団法人全国介護事業者連盟を結成。㈱日本介護ベンチャーコンサルティンググループの代表を務めている。

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