スポンサーリンク

 

 

 

 2011年3月11日の東日本大震災は、日常がいともたやすく損なわれることを、まざまざと見せつけた。大手介護事業所「やさしい手」においても仙台市の訪問介護事務所が被災するなどの被害を受けた。しかし、同法人では本部からの素早い支援により、迅速に営業が再開。震災から3ヵ月後には売上も震災前より向上するなど、大きな成果を上げた。やさしい手の事例から、介護事業者にとってBCPとは何か、その本質を探る。

 

(関連記事)

 

 

---BCPを本格的に意識し始めたのはいつからですか。

大きな転機は11年の東日本大震災ですね。震災前も災害時対応について、ある程度のBCPはありましたが、現在に比べると詳細に体系化されたものではありませんでした。

 

全国組織であるわれわれにとって、東日本大震災以降も、各地で災害対応を行ってきました。昨年は千葉エリアの3施設で台風による長期停電の被害を受けました。18年は北海道での大停電、17年は大阪での台風21号による高潮被害、熊本地震、広島県の豪雨災害……思い返すと、ほとんど毎年のように災害対応に取組んでいます。

 

 

 

---グループとして被災時どのような体制で臨むのでしょうか。

東京本部に対策本部を立ち上げ、指示系統を一本化して支援に当たります。最近はSNS媒体の普及で現地情報の把握や迅速な対応が行えます。逆に、経営者も迅速な意思決定が求められます。こうした新しいICT技術を駆使する一方、被災地には本部の職員を派遣して支援にあたらせています。経験則として、本部で想定している状況と実際の被災現場の状況は大きく異なるケースがほとんどです。必要な物資や支援内容は、やはり現地でないと分からない。

 

しかし、現地職員は現場での利用者対応などに追われ、本部への報告が難しいことが多々ありますし、東日本大震災のように職員自身が被災しているケースも想定しなくてはいけない。グループのBCPの観点で俯瞰し、必要な物資や支援内容を本部に的確に伝えるため、情報収集を兼ねて本部職員を派遣しています。昨年の千葉県の台風被害の際には私自身、現地に赴き状況を確認しました。

 

 

 

想定外は必ず起きる

 

---現場確認と支援内容の判断を重視しているように思えます。

千葉での台風被害では、施設建物へのダメージや人的被害はありませんでしたが、ライフラインの停止、停電や断水が大きな問題になりました。停電や断水は私たちも経験してきましたが、今回は気温の影響、暑さ対策という要素が加わり、入所者が脱水症状になりかねないリスクが生じました。

 

 

そこで東京本部から、入所者のために扇風機やそれを動かすための発電機を急いで送り込みました。「災害」と一括りにしがちですが、被災地の状況や必要な物資は毎回異なる、と言っても過言ではないでしょう。誤解を恐れずに言えば、被災は絶対にある。そして、起きてみないと分からない。どんなに準備をしていても対応できない問題が出てくるそれを前提に組織を運営しています。

 

 

 

「いかに人を動かすか」

 

---香取社長が考える防災対策やBCPの本質とは。

訓練の繰り返し、被災から事業再開までフェーズ別に対応指針を策定しておくことや、BCPに基づいた計画的な物資の備蓄、通信インフラ整備、社員の安全確保など、色々な要素があります。その中で、災害時にいかに人を動かすか、あるいは自律的に動けるか、人のマネジメントについて考えておくことが重要ではないでしょうか。

 

 

東日本大震災の時、災害対策本部とは直接関係ない部署の社員も自発的に「被災地へ支援に行きたい」と手を挙げてくれました。うれしい行動ですが、ある意味で、災害が起きてみないと分からなかったことです。私たちの場合、全国組織の強みを生かして本部と被災した拠点の連携、あるいは本部を介した拠点間の連携支援が講じられますが、それを機能させるには意思決定や行動のルールづくりが欠かせません。

 

やさしい手グループとして多角的に介護サービスを提供していますので、居住系や在宅支援事業ごとにBCPを策定していますが、根本は共通です。

 

 

 

---危機管理という点では、今の新型コロナウイルス感染症対策も「災害」ですね。

今回のような感染症に対しては、マネジメント層向けに感染症予防の研修をいかにしっかり行うかが鍵であると考えます。現場は多忙であるため、スタンダードプリコーション(標準予防策)がおざなりになった結果、感染症が蔓延するというのはよくある話しです。

 

そのため、研修によって事の重要性を意識してもらわなければなりません。懸念事項は、ベテラン職員の理解を得られるかです。経験から「これまでもそんなことをしなくても大丈夫だった」といった慢心が生じることを危惧しています。本部では対策が適切に運用されているか、常にチェックしています。

 

利用者家族に対しては、現場ではコロナウイルス感染症に対して細心の注意を払っていることを発信することで安心感を得られるようにしています。具体的には弊社ホームページに、スタンダードプリコーションの徹底や、職員は出勤前に検温し熱がある場合は仕事を休むことなどを明示しています。

 

 

 

▽高齢者住宅新聞 1ヵ月無料ためし読み・毎週届く年間購読のお申込はこちら▽

システムで状況把握

 

---数千人規模の職員の状態をどのように把握するのでしょうか。

体温に関しては紙ベースではとても把握しきれません。そこで、そのためのシステムを用意しました。職員は検温を実施したら、自分の体温をウェブシステムに入力してもらいます。そしてある一定の体温以上の職員は休んでもらうことにしています。これは3月から稼働しています。

 

また、感染防止のためには利用者の体温の把握も必要です。全事業所においてこれまでの介護記録システムに、体温を記載できる欄を増設して管理しています。

 

 

やさしい手 会社概要
1993年10月1日設立。所在地は東京都訪問介護を中心として、デイサービス、サービス付き高齢者向け住宅などの介護事業、コンサルティング事業を手掛ける。社員数は19年12月時点で5430人(非常勤含む)。北海道から沖縄まで全国に営業所を持つ。近年では認知症の人道迷いや遺失物の早期発見支援サービス「おかえりQR」などのICT技術を活用し、在宅生活限界点の引き上げを目指している。

 

 

 

スポンサーリンク

この記事が気に入ったら
フォローしよう

最新情報をお届けします

Twitterでフォローしよう