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介護現場の負担軽減や効率化のための「科学的介護」の実現が目指されている。
自立支援・重度化防止の効果を科学的に裏付けるため、関連のデータベースの構築が急務だ。厚労省は、既存の介護保険総合データベース(要介護認定情報、介護保険レセプト情報、以下・介護DB)と、通所・訪問リハビリテーションの質の評価データ(通所・訪問リハビリ事業所からのリハビリ計画書等の情報、以下・VISIT)という2つのデータベースを稼働させている。さらにこれらを補完し、介護のエビデンスを構築するため、新たなデータベース「CHASE」の試験的な運用を今年度から開始する。

 

 

 

ADL等加算に要件や労力の壁

 

18年度の介護報酬改定においては、高齢者の自立支援や重度化防止につながる取り組みを促すインセンティブとして、新たに約200億円の交付金を設けた。

 

さらに、デイサービスにおけるアウトカム評価「ADL維持等加算」を新設。これはADLを評価する指標「Barthel Index(バーセルインデックス)」を用いたもので、評価期間において良好な成果をあげた事業所が、その後の一定期間にわたり対価を得られる仕組みだ。

 

 

加算は2段階あり、一定の実績要件を満たした場合に「ADL維持等加算Ⅰ」(月3単位)、さらにバーセルインデックスを用いて利用者のADLを測定し、結果を保険者に報告した場合に「ADL維持等加算Ⅱ」(月6単位)を算定できる。

 

 

 

しかし、18年11月に独立行政法人福祉医療機構が公表したアンケート調査の結果によると、「ADL維持等加算」を実際に算定している事業所は全体のわずか1.1%(18年8月7日時点)。

 

 

要介護度の改善が見込まれる軽度者のみを選別するといったことのないよう算定要件が厳しく設定されているのだが、それゆえに算定までに時間を要すること、労力に対して報酬単位数が低いことなどにより、「将来的にも算定する予定はない」と回答した事業所は75.9%にものぼった。

 

 

加算届け出やや増、VISIT課題

サービス適正化なるか

 

こうした状況を踏まえ、21年度の次期改定に向けて、CHASEの運用が見込まれている。厚労省は有効な改善策を検討するべく、昨秋より「介護保険制度におけるサービスの質の評価に関する調査研究事業」調査を開始。

 

 

▽ADL維持等加算の算定届出を行う上での課題
▽ADL維持・改善以外に目指している目標
▽ADL維持等加算のサービス内容に与えた影響

 

などを調査した。
調査客体には、CHASEに参加が見込まれる約3000事業者が抽出された。

 

 

 

加算や負担軽減策 現場の意見反映を

 

3月26日に発表された調査結果によると、19年4月時点の事業所台帳情報において、「ADL維持等加算(届出)の有無」が「有」の事業所は、通所介護で3741事業所(16.9%)、地域密着型通所介護で657事業所(3.9%)。19年4月サービス提供分の給付実績情報において、ADL維持等加算ⅠまたはⅡを算定している事業所は、通所介護で578事業所(2.6%)、地域密着型通所介護で57事業所(0.3%)だった。なお、通所介護事業所の有効回答数は814にとどまった。

 

 

ADL維持等加算を届出ていない理由としては、「要介護度3~5の利用者割合が算定要件(15%以上)を満たさない」が47.4%、「バーセルインデックスを用いた評価の負担が大きい」が43.3%。18年度と比較すると届出数はやや増加したが、人材確保難という厳しい状況に直面する各介護事業者においては、取り組むメリットよりもデメリットの方が大きい。その上、「算定要件を満たすことができない」という着手以前の課題が表面化したと言える。

 

 

他方で、16年度に構築されたVISITについてもその活用が進まない。科学的介護を展開するための重要な基盤の1つと位置付けられ、18年度改定ではVISITへのデータ提出を評価するリハビリマネジメント加算(Ⅳ)を新設したにもかかわらず、ほぼ算定されていないというのが現状のようだ。データ提出に係る時間と労力に対して、得られる報酬が低いという声が挙がっている。

 

 

このような中で、CHASEの運用が開始される。18年3月の中間報告では、データベースに用いる265項目の初期項目を選定。これに対し、介護事業者らからは計測や入力に要する労力への懸念が寄せられた。

こうした意見を受け、厚労省は収集項目を整理。中間報告に示された項目を基本としつつ、総論、認知症、口腔、栄養の4分野それぞれにおいて、

 

①信頼性・妥当性があり科学的測定が可能なもの
②データの収集に新たな負荷がかからないもの
③国際的に比較が可能なもの

 

の3つの基準にしたがって優先順位をつけた。

 

 

 

さらに、現場負担を考慮しつつ
▽できるだけ多くの事業所が入力すべき「基本的な項目」
▽報酬上の加算の対象となる事業所が入力すべき「目的に応じた項目」
▽各事業所が任意に入力する「その他の項目」

として分類。
「基本的な項目」は全分野あわせて30項目に絞られた。

 

 

 

CHASE運用、保留状態続く

「未来投資戦略」では、次期以降の介護報酬改定時にデータ取得事業所へ加算を上乗せすることで、データ収集を行う事業者にインセンティブを与えると明記されている。しかし、CHASEについて厚労省からの情報更新はなく、「保留状態」だ。今年度以降、CHASEはどのように運用されていくのか。現場に対する正しい評価に即した「科学的介護の実現」が望まれる。

 

 

 

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