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世界的に猛威を振るう新型コロナウイルス禍。高齢者施設では新型コロナ対策の長期化に伴う課題が生じている。フレイルやサルコペニアの進行、認知機能の低下など入所者や利用者の身体的能力の維持や回復が急務の上、マスクや消毒液の不足やコスト高騰など、厳しい経営状況への対処も必要だ。新型コロナ以前の日常を取り戻すには、まだまだ時間を要する。

 

 

 

 

「元気にしている?かわりない?」。そう語りかけてくるのはモニターの画面。だが、見慣れた家族の顔を見ると、入居者の顔は自然にほころぶ。社会福祉法人聖心会特別養護老人ホーム明尽苑(千葉県松戸市)では、3月からオンラインによる面会を実施。企画自体は2月下旬に着手するも、利用希望者の予約などで約1ヵ月の準備期間を要した。

 

 

「施設として初めての試みだったこともありますが、オンライン面会を希望するご家族が多く、システムの説明や、予約日・実施時間などの調整が意外に大変でした」と語るのは同施設の西慶二郎施設長。利用しているのは「ライン」と「ビズミー」で、どちらも無料サービスがベース。施設側では主にパソコンやタブレットを使用。これまでにのべ50件の利用実績がある。

オンライン面会の様子(提供:明尽苑)

 

 

オンライン面会の利用者は全入居者の5割超だが、実際には希望者はさらに多い。「ご家族側にスマートフォンやタブレットがない、インターネット回線が安定しないなどで利用条件がそろわず、残念ながら使えないケースがあるからです」(西施設長)。高齢の独居配偶者などの場合、どうしても利用環境が整わず、いわゆる「デジタル・デバイド」(デジタル機器を使いこなせない人の情報格差)の問題も垣間見える。

 

 

明尽苑では、オンライン面会ができない人や家族に毎月、手紙や写真を相互に送ったり、施設のガラス越しに話をできるように工夫したりして家族の絆をつなぐことに努力している。面会禁止の期間はまもなく3ヵ月半。「精神的なストレスによる体調変化や認知機能の低下などに注意しています。オンラインでなくてもできることはあります」(西施設長)

 

 

 

訪問・通所介護の「三重苦」

「今回の新型コロナ問題で、介護行政の甘さが露呈しました。訪問介護の『崩壊』が早まりつつある」。小規模多機能型居宅介護や配食サービス、グループホームの運営を手がけているNPO法人「暮らしネット・えん」(埼玉県新座市)の小島美里代表は、在宅介護の置かれた状況に危機感を募らせる。小島氏を含む4事業所の代表と訪問ヘルパーが連名で、国への要望書を4月10日に提出。「市町村や保健所はホームヘルパーに安全確保のため具体的な指示を行い、マスク・防護服の支給などの施策を実施すべき」などと要請した。まもなく2ヵ月が経つが、「マスクは市中に出回ってきましたが、アルコール消毒液などは入手できず次亜塩素酸で代用しています。何とか入手できた資材もコストは高騰しています」(小島代表)。

 

小嶋美里 代表

 

 

 

「非常に残念ですが、行政やメディアも『介護崩壊』への危機感が薄い気がします」と小島代表は指摘する。「ケアを受ける側もたいへんなことになっています。特に通所施設を利用していた人の中には、この間の外出自粛で歩けなくなってしまった人もいる。施設では配慮している水分補給や食事が、在宅では十分に配慮できていないケースも多いです」。独居や老々世帯が増えた超高齢社会で進む深刻なケア不足の実情を説明する。「緊急事態宣言の解除は望ましいですが、流行の波は繰り返すと言います。介護の現場は当面厳しい状況が続くと思います。何よりも利用者を新型コロナ以前の心身状態に戻すことは大変なことです」(小島代表)。

 

 

 

外出禁止や施設における家族との面会禁止の長期化に伴い、認知症の人の状態が悪化するケースも増えている。全国で相談を受けている公益社団法人「認知症の人と家族の会」の花俣ふみ代副代表理事によると、各支部の電話相談では、家族だけでなくケアマネジャーや施設など、介護の専門家からの問い合わせ事例も多いという。「認知症グループホームの入所者が、散歩や家族との面会機会が減ったことで、『もの盗られ妄想』が強く発現したケースなどがあります。また心身の状態が不安定になるのを抑えるために新型コロナ対策以降、医師の処方薬が明らかに増えていることを心配して相談された事例も報告されています」(花俣氏)

 

「認知症の人と家族の会」 花俣ふみ代副代表理事

 

 

 

認知症の人へのケア現場においても、デイサービスや認知症カフェなどの利用ができなくなったことの影響は大きい。「今回のような状況下では、『通いの場』を始め、地域包括ケアシステムの柱とされていたものが機能停止しました。他方で、在宅介護に切り替えようにもショートステイや通所介護は利用制限がかかり、ヘルパーは絶対数が足りない。厚生労働省は『無資格者をヘルパー業務に就けてもよい』との事務連絡を出しましたが、認知症の人は慎重なケアが必要な場合が多い。ヘルパーの専門性を、安易に軽視したものだと言わざるを得ません」(花俣氏)

 

 

 

花俣氏は認知症の人のみならず高齢者の認知機能が低下した場合、「回復」することの難しさを指摘する。「ADLや筋力などは、時間を要するものの、手厚いケアがあればある程度は回復できます。しかし、認知機能の低下は、もともと緩やかな下降線をたどっていたものが急速に低下してしまった恐れがあり、元の状態には戻せないかもしれません。回復を目指すというよりも、機能低下をどう防ぐかを考えるべきでしょう」

 

 

 

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