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---連載 点検介護保険---

新型コロナウイルスの対応策では感染者数の動向が最も注目され、その推移に一喜一憂している。だが、検査の仕組みや検査数は国や地域でバラバラだ。実態把握には死者数が妥当だろう。

 

 

イタリアと英国の死者は3万人を超え、フランスとスペインも3万人に迫る(5月26日現在、以下同様)。一方で、東アジア諸国では、インドネシアで1000人を超えたが、日本とフィリピンは800人台。中国に近い台湾と香港は7人と4人、ベトナムは0人だ。人口差を考慮し、人口100万人にあたりを算出しても、両地域で約100倍もの開きがある。この事実を直視したい。

 

 

5月14日に尾身茂新型インフルエンザ対策本部専門家諮問委員会委員長が「日本の死者数はなぜ少ないのか」という記者の質問に答えた。安倍総理が39県での緊急事態宣言の解除を表明した会見の場である。総理の傍らで尾身氏は「理由は3つ」として、第1に日本の確かな医療制度が重症者を救い、第2に初期のクラスターつぶしが有効で、第3として国民の健康意識が高いこと、を上げた。

 

 

この答えでいいのだろうか。日本だけ死者が少ないのではない。国ごとに違う施策がそれぞれ奏功したのだろうか。では、欧州諸国の対策が東アジアと比べ何十倍もおろそかだったのか。そんなことはない。導き出される答えは限られる。欧米を席巻しているウイルスとアジアを襲ったウイルスは種類が異なるとしか説明できないはずだ。

 

 

 

NHKは4月2日の「おはよう日本」で、欧米のL型とアジアのS型と紹介した。「3月初めに発表した中国の研究チームによるもので、世界各地の100あまりのウイルスの遺伝子配列を調べた結果」という。S型が変異してL型を生んだ。

 

 

 

学術誌「bioRxiv」の論考も、中国型と欧州型を峻別。変異で生じたより「凶暴」なウイルスが欧米を襲ったのではという。日本感染症研究所は4月27日に、この説に近い見解をホームページで発表した。「終息した第一波ウイルスは中国からで、次いで欧米発の第二波が広がった」と説明し、5月4日に緊急事態宣言の1ヵ月延長を発表した安倍首相もこの説明を引用した。

 

 

 

A型、B型、C型の3種やG型とK型とする研究者たちもいる。「変異で17種類に広がった」という論文も出ている。つまり、異なるウイルスの強弱の差が死者数となっていると解釈すれば合点がいく。「原因」が異なるのに、欧州と同じような対策でいいのだろうか。

 

 

 

現実は、ウイルス論を吹き飛ばす恐怖感を国民に与え、「営業自粛」に一斉に従わせてしまった。大きな要因は「健康な人が突然亡くなった」とする志村けんさんの報道である。
だが、「かなり喫煙と飲酒をしていたので、その影響があったことは否定できないかもしれない」という事務所関係者の言葉を朝日新聞だけは報じていた。4年前に肺病の手術をしており、実は基礎疾患のある70歳の高齢者だった。ウイルス死者のうち8割は70歳以上と厚労省は発表している。

 

 

 

日本は高齢化率が世界一なので、リスクは高いが、ここで介護保険制度の貢献が見逃せない。特養や老健、有料老人ホームなどの施設で200万人以上がきちんと「隔離」されている。施設死が半数近い欧州とは違う結果を招いた。

 

 

 

交通事故による死者は昨年3215人いたが「車に乗るな」という議論はない。肺炎の死者は同9万人もいた。リスクや自然の摂理を「受容」「許容」しながら私たちの日常生活は成り立っている。日常生活を壊す「自粛」が選ばれるべき政策だったのだろうか。

 

 

 

浅川 澄一 氏
ジャーナリスト 元日本経済新聞編集委員

1971年、慶応義塾大学経済学部卒業後に、日本経済新聞社に入社。流通企業、サービス産業、ファッションビジネスなどを担当。1987年11月に「日経トレンディ」を創刊、初代編集長。1998年から編集委員。主な著書に「あなたが始めるケア付き住宅―新制度を活用したニュー介護ビジネス」(雲母書房)、「これこそ欲しい介護サービス」(日本経済新聞社)などがある。

 

 

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