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---【連載第160回】具体例で学ぶ介護施設の事故防止策 ---

 

 緊急事態宣言は解除されたものの、札幌市や北九州市では新型コロナウイルス感染者が再び増加し、予断を許さない状況です。入所施設においても、3月にクラスター発生が確認された千葉県の知的障害者施設に続き、千葉県と札幌市の老人保健施設でも発生しています。

新型コロナウイルスの潜伏期間は平均5.8日で、感染力は発症時がピークという極めて異例のウイルスですから、陽性判明時には既に、周囲に感染が拡大している可能性は高いでしょう。このことから、施設には感染者発生時の大クラスター回避対策が必須となります。

 

 

 

■小規模ユニット化は必須

従来から「10名1ユニットの新型特養では、インフルエンザの感染が拡大しない」と言われてきました。利用者に感染者が発生したとき、1利用者に関わる職員の人数が少ないほど、施設内での感染拡大を避けられるからです。

1職員が介護業務で関わる利用者が最大でも10名の小規模ユニットの施設と、1職員が100名全ての利用者に関わる担当非固定型の施設では、感染拡大のリスクが10倍違うのは自明の理です。

 

 

ですから、職員の担当職場の小規模ユニット化は、感染症発生時に被害を最小限に抑える必須の対策ということになります。シフトのやりくりは難しくなりますが、フロア30名の職場を2つに分割して15名ずつの職員担当制に変えるなどの対策を、今すぐしなければなりません。担当非固定型(総当たり制)は感染拡大防止対策では、タブーということになります。

 

 

 

■身体介護で密接しない介助法

3密回避対策の中でも重要なのは「密接場面」の回避ですが、身体介護は職員が利用者に密接状態にならなければできません。職員がマスクをすれば一定程度、感染を防げると思うかもしれませんが、マスクはその構造上「エチケット効果(他人に移さない)」は「ウイルスブロック効果(他人から移されない)」より劣っています。

 

マスクの感染防止効果は、息を吸うときは顔に密着し効果は高いのですが、息を吐くときには隙間から呼気が漏れるので効果が低くなるためです。そうなれば身体介護の場面では利用者にマスクをしてもらわなければなりませんが、認知症の利用者には無理があります。それでは、身体介護場面で少しでも密接状態を避ける方法はあるのでしょうか?

 

まず、どのような介助場面の、どのような介助方法において密接度が高いのかを介護職員と一緒に洗い出してみました。特に顔と顔が接近する場面は、直接ウイルスが鼻に侵入する危険があり、避けなければなりません。主な密接介助場面は表の通りです。

 

 

 

この中でも移乗の介助は、「頬ずり」の状態になり、顔と顔の密着度が高く回数も多いので、対策が必要です。

 

 

今度は介護職員と密接介助を避ける方法を一緒に考えました。「マスクをきちんと顔に密着させる」「できるだけ利用者と介護職員の距離を保つ」「大きな声で話さない」「顔が近づかない介助方法に変える」などが職員から出された、密接を避ける苦肉の策です。しかし、実際に「顔が近づかない介助法」ってあるのでしょうか?

 

 

何人かのPTにアイディアを出してもらったところ、特に密着度の高い移乗介助においては、「トランスボードを使用する方法」や「職員が利用者の前にしゃがんで前かがみの利用者を支える方法」などがあるそうです。実際にやってみると、確かに「頬ずり」状態は避けられます。全ての利用者に使える介助法ではないので限界はありますが、少しでもリスクが減る行動をするべきです。

 

このように現場で細かい対策を積み上げることが現時点でできる唯一の方法です。

 

 

 

 

安全な介護 山田滋代表
早稲田大学法学部卒業と同時に現あいおいニッセイ同和損害保険株式会社入社。2000年4月より介護・福祉施設の経営企画・リスクマネジメント企画立案に携わる。2006年7月より現株式会社インターリスク総研、2013年4月よりあいおいニッセイ同和損保、同年5月退社。「現場主義・実践本意」山田滋の安全な介護セミナー「事例から学ぶ管理者の事故対応」「事例から学ぶ原因分析と再発防止策」などセミナー講師承ります。

 

 

 

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