---連載第19回 ウィズコロナ時代をどう生きるか---

 

能動的な政策構想を

 

人類とパンデミックとの戦いは、まさに世界史そのものだ。6世紀から18世紀、ヨーロッパを繰り返し襲った「ペスト」は、14世紀、当時のヨーロッパ全人口の1/3を死に至らせていた。『ロビンソン・クルーソー』の作者、ダニエル・デフォーの力感あふれるドキュメンタリー、『ロンドン・ペストの恐怖』で描かれた350年前のパンデミックも、ロンドン市民の死に対する感情を麻痺させてしまうほど、悲惨な状況であった。

 

暮らしを支える業種以外のあらゆる商売が停止してしまい、富裕層の大半はロンドンを脱出し、貧しいものがリスクに晒された。解雇された召使いやメイド、職人、店員などは数知れず、彼らは仕事も家も失うという境遇に陥った。当時と今は、まるで同じことが起きている。

 

 

 

歴史家のウイリアム・H・マクニール氏は、著書「Plagues and Peoples」(1976)のなかで、「どれだけ医療が発達しようとも、人類は感染症のリスクからは逃れられない存在だ」と語っている。エボラやHIVなどの感染症を糸口に、彼が指摘した現代社会における危険性は、まさに今現実となった。さらに、感染症をなくすことはできないのだから、共生を模索すべきだと強調する。

 

 

 

わが国のメディア報道は連日、分母のわからない感染者数を発表して恐怖を煽り、国民の不安を払拭できないまま、政府は〝GoTo Hell〞キャンペーンになりかねない緊急経済対策を実施した。現在の混乱のなかで起きている様々な問題と、ウィズコロナのニューノーマルを模索する構想とを分けて考えるべきではないか。

 

 

 

コロナショック以降、さまざまな分野に大きな変化が起きている。企業においても思い切った挑戦が必要だ。コロナ禍では、世界を股にかける商社マンは海外に行かれない状況にあるが、総合商社の三井物産は、1兆5000億円の巨大な融資を全てオンライン会議で済ませ、契約を成立させた。〝新しい価値〞を見出せる組織が次なる世界を牽引するのだろう。政策においてもデジタルトランスフォーメーションを意識した、経済活動を止めない対策を進めるべきだ。

 

 

台湾に学ぶ安心への対策と経済活動

 

海外に視点を移すと、マスク配布システムで脚光を浴びた、デジタル行政の台湾に学ぶべきものがある。
高雄市は、公共交通利用時にはマスクの着用を義務付けており、違反者には罰金が科せられ、感染予防を徹底している。新幹線や地下鉄の改札口にも最先端のシステムが導入されている。

 

 

改札の入口に検温器が設置されており、熱発の人が通過するとゲートが開かない仕組みになっている。車内は1時間おきに、バスは1循環毎に消毒を行う。わたくしは緊急事態宣言が解除されてから、東京から二度新幹線を利用した。席を予約する際に、間隔を空けてチケットを販売しているのかと念のため職員に訊ねてみると、「特にしていません」と答えていた。

 

経済を動かすには、台湾のように利用者への安心のための徹底した対策が重要だ。17年前のSARSの経験が交通業者に受け継がれており、市民が安心を担保できる環境が整備されているからこそ、都市封鎖なく、移動を止めずに経済活動ができているのだ。

 

 

わが国は、絆創膏をペタペタと貼るだけの応急処置をいつまで続けるのか。早急に能動的な政策の構想に取りかかるべきではないだろうか。

 

 

小川陽子氏
日本医学ジャーナリスト協会理事・広報委員。国際医療福祉大学大学院医療福祉経営専攻医療福祉ジャーナリズム修士課程修了。同大学院水巻研究室にて医療ツーリズムの国内・外の動向を調査・取材にあたる。2002年、東京から熱海市へ移住。FM熱海湯河原「熱海市長本音トーク」番組などのパーソナリティ、番組審議員、熱海市長直轄観光戦略室委員、熱海市総合政策推進室アドバイザーを務め、熱海メディカルリゾート構想の提案。その後、湖山医療福祉グループ企画広報顧問、医療ジャーナリスト、医療映画エセイストとして活動。2019年より読売新聞の医療・介護・健康情報サイト「yomiDr.」で映画コラムの連載がスタート。主な著書・編著:『病院のブランド力』「医療新生」など。

 

 

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