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「陰性なら安心」で感染拡大も

 

新型コロナの感染は拡大を続けている。私たち医療法人社団悠翔会は、首都圏で約5000人の在宅患者の療養支援を担当しているが、第一波では「濃厚接触者の接触者」が2名出た以外は、在宅での感染者や濃厚接触者はいなかった(入院中の患者の院内での感染、陽性者の退院支援を除く)。

 

しかし第二波では、すでに在宅患者の感染者が1名、濃厚接触者が5名、濃厚接触者の接触者については7名と、新型コロナの感染拡大は高齢者ケアの現場に着実に近づいてきているのを感じる。

 

 

そのような中、気になる症状があるからPCR検査を実施してほしいという方と日々お会いする。しかしPCR検査を免罪符のように考えておられる方はまだまだ少なくない。

 

私たちの患者も利用するあるデイサービスでは、微熱のある職員が念のために実施したPCR検査で陰性であったため勤務を継続したところ、複数の利用者に感染を拡大させてしまった。ここで改めて新型コロナに対するPCR検査の意義について確認しておきたい。

 

 

 

PCR検査の陰性は、非感染を意味しない

PCR検査の感度は低い。最大で70%程度。つまり、10人感染者がいた場合、検査結果が陽性になるのは7人、残りの3人は感染しているにも関わらず陰性ということだ。「検査結果が陰性で安心した」などというのは間違いだ。

 

検査が必要と判断した時点で「感染している可能性がある」という前提で、症状出現から10日間は自己隔離が必要だ。そんなに待てない、という場合には再検査を受けてもよいが、再検査の結果も正しいとは限らない。また発症から時間が経てば経つほど検査の感度は低下していく。PCR検査は決して免罪符にはならない。

 

 

PCR検査の陽性は、感染力を意味しない

PCR検査は新型コロナウイルスのRNAの断端を検出する検査だ。したがって「感染力のある生きたウイルス」の有無を調べているわけではない。新型コロナが感染力を失っても、しばらく間、PCR検査は陽性になる可能性が示差されている。

 

したがって、PCR検査が陽性だから感染力がある、というわけではない。新型コロナはPCR検査の結果が陽性であっても、発症から6日目以降であればほとんど感染が起こらないことがわかっている。発症から10日、症状消失から3日経過していれば通常勤務は差支えない。検査結果の陰性確認が勤務再開の条件というのは過剰対応だ。

 

 

新型コロナの感染力が最大になるのは症状発現前

新型コロナの感染力は、症状発生の平均0.7日前(症状のない潜伏期間中)に最大になることが知られている。熱や咳があれば新型コロナを疑い検査を行う、出勤停止にするなどの対処ができるが、無症状の時期に感染から利用者・入居者を守るためには、症状のある職員の出勤停止だけでは十分ではない。

 

やはり日々のユニバーサルプリコーションが非常に重要になる。マスク+手洗い、十分な換気、体液を扱うときのグローブの着用、これらを徹底するとともに日常生活での感染リスクを減らす努力を継続することが大切になる。

 

 

最近、PCR検査以外にもさまざまな検査が出現している。代表的なものは「抗原検査」と「抗体検査」だが、この2つは似ているようで全く異なる。抗原検査がPCR検査に準ずるものであるのに対し、「抗体検査」は感染の既往を調べる検査だ。

 

この抗体検査に対する理解不足による感染拡大も相次いでいる。新宿の劇場では、舞台の主催者が体調不良の役者に対し「抗体検査」を実施し、その結果が陰性であったことから興行を続行、結果として800人もの濃厚接触者を発生させた。

 

 

その検査は何がわかるのか、その検査結果は何を意味しているのか、しっかりと判断できなければ検査をする意味が失われる。最近は、自己判断で検査キットを購入することもできるが「検査さえ陰性なら」という思考停止はむしろ危険ですらある。

 

 

佐々木淳 氏
医療法人社団悠翔会(東京都港区) 理事長、診療部長
1998年、筑波大学医学専門学群卒業。
三井記念病院に内科医として勤務。退職後の2006年8月、MRCビルクリニックを開設した。2008年に「悠翔会」に名称を変更し、現在に至る。

 

 

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