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【連載第87回】人生の転機

 

この連載の新型コロナ体験記でも報告したように、今年3月に新型コロナ肺炎に罹患して1ヵ月間の入院生活を余儀なくされました。

 

 

それは突然でした。3月中旬、風邪症状と発熱で始まり、最初は自宅隔離で過ごしましたが、熱発が続くので、外来を受診すると胸部レントゲンとCTで肺炎像、急遽感染病棟に入院し、PCR検査でも陽性で新型コロナウイルスによる肺炎が確定しました。

 

 

入院してからも39度台の熱発が続きました。経鼻の酸素カニューレと、抗菌剤とステロイド吸入薬、指先にパルスオキシメーターを付けて床上安静が続きました。呼吸困難はありませんでしたが熱発のため意識はもうろう、食欲も全くなく新型コロナ肺炎の強烈さを、身を持って体験しました。
高熱のためもうろうとした意識の中、カナダ出身の内科医ウイリアム・オスラーの「肺炎は老人の友」という言葉が脳裏を駆け巡りました。

 

 

私の場合は幸い入院10日目に突然、解熱が始まり、急速に快方に向かいました。初めて経鼻の酸素カニューレとサチュレーションモニターが外れて、病室で熱いシャワーを浴びたときには生まれ変わったような気がしました。ただ、肺炎からの回復に時間がかかりました。退院してからも体調不良が続き、職場復帰もできず、同僚の皆さんには大変ご迷惑をおかけしましたが、前職の国際医療福祉大学を退職いたしました。

 

 

その体調も少しずつ回復し、7月からご縁があって、横須賀にある日本医療伝道会の衣笠病院グループのお世話になることになりました。週3日の勤務ですが外来や老健、在宅医療の仕事を徐々に始めております。これまで大学では地域包括ケアシステムについて制度面から考えてきましたが、実際に地域の現場に出て患者さんや利用者さんに、じかに接する中で、あらためて高齢化する地域とその現実に触れて驚きの連続です。

 

 

ところで衣笠病院では毎朝8時半からチャペルで礼拝の時間があります。先日の朝の礼拝で、聖書の次の言葉と久しぶりに再会しました。「風は思いのままに吹く。あなたはその音を聞いても、それがどこから来て、どこへ行くのかを知らない。霊から生まれた者も皆そのとおりである」(ヨハネによる福音書3章8節)。この「風」は、「霊」と同じ意味でしょう。風がどこから来てどこに行くかはだれも予想はできません。ただ風の音を聞き、その存在は感じることができます。そして風によって「新たに生まれる」ことができます。

 

 

人それぞれに人生の転機が否応なしに訪れます。私の場合はまさに新型コロナが人生の大きな転機となりました。

 

 

 

武藤正樹氏(むとう まさき) 社会福祉法人日本医療伝道会衣笠病院グループ相談役

1974年新潟大学医学部卒業、国立横浜病院にて外科医師として勤務。同病院在籍中86年~88年までニューヨーク州立大学家庭医療学科に留学。94年、国立医療・病院管理研究所医療政策部長。95年国立長野病院副院長。2006年に国際医療福祉大学三田病院副院長・国際医療福祉大学大学院教授、国際医療福祉総合研究所長。政府委員等 医療計画見直し等検討会座長(厚労省)、「どこでもMY病院」レセプト活用分科会座長(内閣府)、中医協調査専門組織・入院医療等の調査・評価分科会座長

 

 

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