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訪問看護師の倍増急務

 

 9月に入り介護報酬改定の議論が最終局面を迎える。焦点の1つは地域包括ケアシステムを支える訪問看護・在宅医療の拡充支援だ。公益社団法人日本看護協会(以下、日看協/東京都渋谷区)はこれまでに訪看推進に関わる要望や政策提言を積極的に行い、社会保障審議会介護給付費分科会でも必要性を訴えてきた。同会の岡島さおり常任理事に訪看を取り巻く現状の課題と今後の取り組みを聞いた。

公益社団法人日本看護協会 岡島さおり常任理事

 

 

―――日看協で打ち出されている「訪問看護師倍増策」とは。

岡島 厚生労働省の推計では、「訪問看護師の需要は2025年に約12万人が必要になる」とされています。しかし、16年時点の訪問看護従事者は約4.7万人で年間約3000人程度の増加にとどまっています。このまま自然増に任せていては、25年には7.6万人程度で、およそ4.5万人の不足が見込まれます。医療保険で訪問看護を行っている病院・診療所の数も16年時点では、医療機関全体の3.9%、全国4284ヵ所にとどまっています。今後の需要に対応するためには、国の医療や介護施策の中で訪看を行う人材確保と支援策が明確にされ、さらに地方自治体の医療計画や介護保険事業(支援)計画などでも具体的な目標が定められるべきだと考えています。

本会が提案する「訪問看護師倍増策」は
▽訪問看護従事者の増加に向けた方策
▽人材確保のための基盤整備に関する方策
▽総合的な推進・支援
を柱にしています。

 

 

―――訪問看護師を増やす基盤として訪問看護ステーション拡充があります。

岡島 ここで言う「拡充」には2つの意味があります。1つは、連携や共同実施を通じた看護以外の業務の効率化です。これまで訪問看護ステーションは比較的規模が小さい事業所が多く、看護人材が間接的な事務作業も担っている実情が少なくありません。レセプト請求事務や衛生材料などの発注・管理、経費・財務管理、雇用している職員の労務管理などです。規模が大きくなれば、専属の事務スタッフを雇うなどの対応も講じられます。そこで本会としては、共同できる作業は複数の事務所間で連携する仕組みを通じて、看護職が看護業務に専念できる体制づくりを提案しています。もう1つは、訪問看護ステーションの大規模化です。

 

具体的には、人員基準を現在の「常勤換算2.5人」から今後は「同5人以上」などへ段階的に引き上げていくとともに、大規模化が難しい地方、例えば過疎地や中山間部などでは、サテライト(出張所)方式を活用していく方向です。既存の小規模の事業所を否定するものではありませんが、経営の安定や効率化を図るには、やはりある程度のスケールメリットを目指すことが必要になります。

 

 

―――一般的に、訪看はベテランや中堅の看護師の就業が多い印象を受けます。

岡島 新卒の訪問看護師が少ないのは事実ですね。訪看に関心がある新卒看護師は少なくありませんし、事業所側も人材確保の希望はありますが、新卒採用者の育成や教育研修を事業所ごとに担うのは簡単ではありません。そこで本会では、訪看の教育拠点設置の必要性や研修を受けやすい環境整備、人材育成も担う「機能強化型訪問看護ステーション」の活用推進を国へ働きかけています。

 

 

 

―――人材育成や教育研修も、事業所の規模が壁になりますね。

岡島 医療機関に勤務する看護師と訪問看護師の「人事交流」や「看看連携」など実働の場の拡大も人材育成につながると思います。

 

 

 

都道府県などに基盤整備

 

――― 19年度にスタートした「訪問看護総合支援センター」構想はどういう位置づけですか。

岡島 都道府県看護協会などが主体となり、県行政や関連団体と連携しながら訪問看護に関するさまざまな課題を一体的・一元的に解決する拠点です。

機能としては
①事業所運営基盤の整備
②教育・研修実施体制の組織化
③ 事業所の開設
④新卒看護師採用の支援
⑤情報分析
⑥潜在看護師・プラチナナースの就業などの支援
⑦ 人材出向
を想定しています。

訪問看護総合支援センターの機能イメージ

 

類似した取り組みや機関を持つ都道府県看護協会、訪問看護ステーション連絡協議会などもありますが、具体的な検討に至っていない都道府県も全国で3分の1ほどあります。本会の試行事業では19年度に1協会、20年度は3協会が参加しており、今後は必要なセンター機能や先進例を紹介・後押ししていくことで全国的な動きへ発展させたいと考えています。

 

 

―――21年度介護報酬改定に向けて、看護小規模多機能型居宅介護(看多機)における自立支援・重度化予防の評価などを求めています。具体的なポイントは。

岡島 看多機における

▽褥瘡の発生予防のための管理
▽排泄に介護を要する利用者への支援
▽栄養状態のマネジメントに基づく栄養改善・維持の取り組み
▽経管栄養の利用者の経口移行や経口維持の取り組み

―――といった自立支援・重度化予防への評価を求めています。

 

看多機は、看護師によるアセスメントに基づいて利用者1人ひとりに合わせたサービスを柔軟に組み合わせ、多職種協働でケアも実施しますので、前回改定で介護施設に新設された加算と同様に、看多機の自立支援の取り組みを評価していただきたい。さらに訪問看護については、退院・退所日当日の訪問看護費算定対象者の拡大や複数の訪看ステーションによる24時間対応体制の強化、夜間・早期加算や深夜加算の要件緩和を求めています。ほかにも、看多機の機能強化・設置促進、看護師による認知症ケアの拡充、看取り対応強化に向けた報酬体系の見直しを要望しています。

 

―――21年度改定では、感染症対策が新たな論点になり、特に専門職である看護師の役割は、介護現場からも注目されています。

岡島 春以降、高齢者だけでなく障害者施設も含めて新型コロナのクラスター感染が相次いだ際、感染管理認定看護師や感染症看護専門看護師が介護施設や地域密着型サービスなどの場へ出向き、支援や助言を行いました。感染予防や拡大防止のため、各施設の設備に応じたゾーニングや職員の動線確認、防護具の使用方法などについて実践的にアドバイスするなど、看護師の専門性が活用されました。

 

今回、介護施設・事業所が感染管理の専門性が高い看護師との連携により感染予防の体制整備を行った場合に「感染予防対策加算」として評価することを提案しています。内容としては、外部の医療機関などと連携して、専門性が高い看護師の支援を通じて職員や利用者などに標準予防策を実践・指導したり、感染予防マニュアルの作成や職員研修などを想定しています。

 

 

―――日看協は厚労省に「訪問看護推進室(仮称)」の設置を求めました。興味深い提案です。

岡島 訪看は、医療と介護の両方に関わる点がメリットですが、制度として考えると、医療保険と介護保険という2つの制度の上に成り立ち、施策も厚労省の複数の部局に分かれています。これは地方自治体においても同じですが、まずは厚労省に担当部署の一元化を図っていただき、医療、介護、福祉の制度の整合性を図りながら訪看施策を推進してほしいと考えています。その上で根拠法となる「在宅療養推進法」(仮称)を制定し、「訪問看護推進総合計画」(仮称)など国の総合計画を策定していただきたいと考えます。

 

 

 

 

公益社団法人日本看護協会 岡島さおり常任理事

公益社団法人日本看護協会 岡島さおり常任理事
おかじまさおり○保健師、看護師。天使大学大学院看護栄養学研究科看護学専攻修了。厚生労働省老健局振興課地域包括ケア推進官、札幌市保健福祉局高齢保健福祉部地域包括ケア推進担当部長など歴任。2019年6月から日本看護協会常任理事。社会保障審議会介護給付費分科会委員など。

 

 

 

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