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病棟・在宅の連携強化図る

 

年間300人以上を在宅で看取る、医療法人社団焔「やまと診療所」(東京都板橋区)。在宅医療に力を注ぐ同診療所は、「おうちにかえろう病院」(同・120床)を来年4月に開院する。これまでの取り組みと、初の病院開設に至った経緯から、「在宅看取り」における地域医療の役割について探る。

医療法人社団焔「やまと診療所」安井佑院長

 

 

「『非健康寿命』を患者が幸せに過ごせるように支える。それが、これからの地域医療のあるべき姿だ」と、安井佑院長は自身の思いを語る。

 

常勤医師13名、非常勤医師12名、医師をサポートする法人独自の「在宅医療PA」(以下・PA)35名など、全109名のスタッフで構成されるやまと診療所。板橋区及びその近隣地域で在宅医療を担っている。
〝自宅で自分らしく死ねる。そういう世の中を作る。〟——その理念には、「死」を不可避なものとして受け入れた上で、医療の力で「その人らしい生き方を最期まで支える」という思いが込められている。

 

 

やまと診療所は2013年の開設以降、新規患者数並びに自宅看取り数を年々伸ばし続けており、現在の患者数は約1000名に至る。また、2019年7月〜20年6月まで、341名を在宅で看取っている。それを支えるのがPAの存在だ。
PAは訪問時に医師に同行しそのサポートをするが、医療行為は行わない。その役割は「調整役」だ。患者、その家族、医師、ケアマネジャーなど、様々な人の話を聞き情報共有や橋渡しを行い、患者の望む医療を形づくっていく。

 

 

 

「医師は病気という『問』に回答する能力に長ける。しかし、患者の望む医療の実現には、様々な人の話を聞き、それらをもとに『問』を立て、それをチームで解決していくプロジェクト型の思考も不可欠だ」と安井院長は指摘する。「そこで、医師が不得手な部分をPAがカバーする図式となっている」とPAの意義について語る。

 

 

 

病院を初開院、在宅の生活意識

 

来年4月には同法人初となる病院、「おうちにかえろう病院」を板橋区に開院する。120床すべて地域包括ケア病床、急性期から在宅への移行期間中の入院(ポストアキュート)、一時的に容態が悪化した際の入院先(サブアキュート)としての役目などを担う。

 

おうちにかえろう病院外観

 

「『この地域で最期まで生きられる』という安心感の提供」を目指すという同病院では、在宅チームが病院内の患者も診る体制とし、在宅とのシームレスな連携を図る。それにより、その人が家族にとってどのような存在か、何に価値を置いているのかといった「ストーリー」に基づき在宅での生活をイメージした治療プランを構築できるほか、入院中から退院後まで一貫した医療プランの提供が可能となる。

 

病院のコンセプトは、「人生をそっと思い出す場所」であるという。「患者にとって、『残された人生で何を実現したいのか』を考える場所にしたい。それが決まったとき、我々が退院後もその実現を支えていく」。

 

 

 

「非健康寿命」支える地域医療

 

おうちにかえろう病院開院の理由について安井院長は、病院では病気を治すことだけに主眼が置かれている現状に疑問を持ったためだと言う。

「例えば肺炎を患った夫婦2人暮らしの高齢女性のケース。夫を介護しており、本人も少し認知症がある。入院となったら2週間ほど抗生剤投与となるため、認知症がある場合、点滴を抜かないように拘束される。結果、肺炎は完治したが退院時には心身機能が弱まり、夫婦で暮らす日常には戻れなくなってしまう」。

 

 

12年度の内閣府の「高齢者の健康に関する意識調査」では、55%が自宅で最期を迎えたいと回答している一方で、17年の人口動態調査で73%が病院で最期を迎えているとの結果が示されている。そこからも、本人の望む医療、そして最期が実現できていない現状が見て取れる。

 

 

超高齢社会、その先の多死社会に向け、病気を抱えながら生きる「非健康寿命」に差し掛かった人々に対して、「非健康寿命を良く生きるための医療」という発想が必要になるだろうと安井院長は言う。患者に残された時間が幸福なものとなるように、患者に関わる地域の様々な人の話を聞き、その人々とチームで動く能力が、今後地域医療に求められることになりそうだ。

 

 

5割を超える人々が自宅での看取りを希望している

 

 

 

 

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