---CHECKマスコミ報道【連載第96回】---

長野県安曇野市の特養職員が起訴された「ドーナツ裁判」について、8月26日の朝日新聞が、「ゼロ・リスク志向に歯止めをかけた」と判決を評価した。筆者の浜田陽太郎編集委員は「現場の裁量を正面から認めた」とも指摘。その通りだろう。

 

 

「ゼロ・リスク」に歯止めを

 

だが、コロナ騒動では、医療者たちが唱える「ゼロ・リスク」の考え方に、メディアは残念ながら振り回されてきた。インフルエンザは毎年のことなのに、おかしい。やっと、最近になってバランス感覚が紙面に出てきた。

 

 

9月6日の東京新聞は「リスク、ゼロにできない」という社説を堂々と掲げた。「経済より命が大事」とされる中で、思い切った見出しである。中学生が一人感染しただけで、その自治体の全中学校の部活動が10日間も中止された事例を挙げ、「過剰反応」と指摘。「リスクを受け入れることを前提に」と見事な論陣を張った。

 

2日の読売新聞では「経済活動維持への感染対策」をテーマに浦島充佳・東京慈恵医大教授が、インフルエンザより死亡者がかなり少ないとした上で、「一律な経済活動の制限は社会的コストが大きすぎる」と明言した。

 

過剰な締め付けの「被害」を取り上げたのは読売新聞。「コロナ禍と社会的弱者」として8月31日から3回連載した。ホームレスや引きこもりの人、児童養護施設の出身者たちに焦点を絞って追跡。いずれも営業自粛のため仕事を奪われたり、集いの場が消えてしまった実態を当事者の言葉で綴るいい企画だった。

 

認知症の高齢者への影響を「悪化の懸念」としてまとめたのは8月31日の日本経済新聞。「外出や人との交流が制限され、専門家の半数が機能悪化を指摘」と、学会や調査機関の声を集めて構成した。

 

コロナ禍一色のメディアだが、かねてトラブルが多く問題視されてきた懸案を紙面化したのは9月2日の朝日新聞。

 

「高齢者施設の紹介業者 質に差」「任意の届け出 来月からHPで公開」という見出しで、全国有料老人ホーム協会など3団体でつくる「高齢者住まい事業者団体連合会」(高住連)の前向きな動きを大きく掲載した。

 

紹介事業があまりにも手軽に開業できることから、利用者からの苦情が絶えない。空室対策の足元を突かれてきた施設側が、やっと消費者・利用者側に立って団体として取り組み出した。もっと注目されていいことだろう。

 

 

浅川 澄一 氏
ジャーナリスト 元日本経済新聞編集委員

1971年、慶応義塾大学経済学部卒業後に、日本経済新聞社に入社。流通企業、サービス産業、ファッションビジネスなどを担当。1987年11月に「日経トレンディ」を創刊、初代編集長。1998年から編集委員。主な著書に「あなたが始めるケア付き住宅―新制度を活用したニュー介護ビジネス」(雲母書房)、「これこそ欲しい介護サービス」(日本経済新聞社)などがある。

 

 

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