高齢者に多い膀胱がんと前立腺がん
男性に多いがんと言えば、膀胱がんと前立腺がんが挙げられます。
膀胱の表面は、移行上皮と呼ばれる伸縮性に富む粘膜で覆われていますが、膀胱がんの約90%は、この移行上皮の組織ががん化することによって発症します。3対1の割合で男性に多く、40歳くらいから発症率が高まります。
膀胱がんは、表面がぶつぶつとしたがんが膀胱の内腔に向かって飛び出し、転移や浸潤(がんが周囲に広がること)をしない表在がん、こぶのような形状をしていてリンパ節や肺などに転移しやすい浸潤がん、悪性度が高く、放置すると浸潤がんになる恐れのある上皮内がんに大別されます。
厚生労働省の人口動態調査によると、2018年の膀胱がんの男性死亡数は5796人で、10年前の2008年と比較して30.6%増となっています。
膀胱がんの最大の危険因子は、喫煙と言われています。
主な症状は、血尿、頻尿、排尿痛などです。初期には膀胱炎と思い込んで病院に行き、そこでがんが発見される場合もあります。進行すると排尿障害、腎盂炎といった症状が出るほか、尿管への転移の確率も高まります。
前立腺は、膀胱の出口にあってクルミのような形と大きさをしています。男性だけにある臓器で、精液の一部をつくる機能があります。
前立腺がんは、前立腺の外側に位置する外腺に発症しやすいため、周囲の骨盤や脊椎、リンパ節に転移しやすく、早期発見が重要になります。その悪性度によって高分化型、中分化型、低分化型に分類されています。
厚生労働省の人口動態調査では、2018年の前立腺がんの男性死亡数は1万2250人で、10年前と比べて22.6%増となっています。
前立腺がんは、加齢にともない前立腺機能が低下し、男性ホルモンのバランスがくずれるなどの理由により発症すると考えられていますが、詳しいことは解明されていません。症状は、排尿困難、頻尿、残尿感がある、夜間多尿、尿意切迫(尿意を感じると我慢ができない)、下腹部の不快感などです。
また、がんではありませんが、前立腺に発症する病気として前立腺肥大症があります。高齢者に多く、加齢とともに前立腺が肥大し、排尿困難や頻尿、残尿感など、前立腺がんと類似の症状を引き起こします。

秋山晴康氏
秋山晴康氏
物流誌、エンターテインメント誌、旅行情報誌の編集長を経て、介護雑誌「かいごの学校」(日本医療企画)を編集。その後、医療ムックの編集・発行人、週刊誌への記事広告掲載など医療編集に携わる。