認知症項目なく 入力負担も
厚生労働省は9月14日、社会保障審議会介護給付費分科会を開催。2021年度介護報酬改定に向けて、「自立支援・重度化防止」をテーマに話し合われ、中でもVISIT及びCHASEの運用推進や、BI(バーセルインデックス)活用などについて議論が集中した。
自立支援・重度化防止において重要な「介護の質の評価」については、同分科会において複数年にわたり、調査研究事業などを実施し検討を重ねている。今年度にCHASEの運用を開始し、来年度にはVISIT・CHASEの一体運用を開始するとして進める中で、データ収集に係る介護現場の負担や入力ソフトの課題、関連する加算の算定率の低さなど多くの課題が挙げられてきた。
今回の議論でも、多くの委員がこれらに言及。「VISIT・CHASEの一体運用に際し、他施設利用者との比較分析など使えるデータのフィードバックがない現時点で、既存加算の算定要件にデータベースを加えるのは厳しい」「ソフト連携でないと負担が重すぎる。ソフト導入・更新の支援も報酬と別で対応すべき」(伊藤彰久委員・日本労働組合総連合会総合政策推進局生活福祉局長)などの意見が挙げられた。
CHASE、VISIT 21年度中に一体運用へ
VISITの評価指標として活用されているBIについては、これを活用したADL維持等加算の取得率が2.38%(20年4月時点)と低迷している。
算定要件の中でも、評価対象利用期間中の最初の月において「要介護度3~5の利用者が15% 以上含まれること」「初回の要介護・要支援認定があった月から起算して12ヵ月以内の者が15%以下」の2点がハードルとなっているとの声が多い。
「これら要件の見直しと、事務手続きに見合う報酬に引き上げることが必要」との意見が挙げられた一方で、東憲太郎委員(公益社団法人全国老人保健施設協会会長)は「BIは50数年前にできた評価指標で認知症の項目も入っていない。業界ではほとんど使われておらず、対応する介護ソフトも少ない。厚労省はいつまでBIを使うのか、検討すべき」と踏み込んで言及。武久洋三委員(一般社団法人日本慢性期医療協会会長)も「医療保険ではFIMを使っており、認知症の項目もある。現在は医療と介護が密接であり、評価指標統一を検討してよいのでは」と述べた。
これに対し事務局は「一定程度普及していること、国際的に比較可能であることなどからBIを使っている。現場での普及、学問的観点からの確立を期待する」とBI活用を進める姿勢を示したが、本紙の取材に対し東委員は「全老健で開発している評価指標にICFステージングがある。認知症項目も入っており、こうした評価指標も望ましいのではと思う」としている。
また、神奈川県ではすでに、CHASE連携を補助要件に医療介護総合確保基金を活用したICT導入支援の補助を実施しているが、同基金の補助率はソフト導入にかかるコストの2分の1であり、コロナ禍において100万単位でかかるコストに対する負担としては重い。この補助率を4分の3、5分の4と上乗せするよう求める意見もあった。CHASEの対象範囲なども未定であり、今後議論を深めるべき課題は多い。

出所:厚生労働省資料より抜粋