【連載第134回 超高齢社会の相続対策】
「100万円特別控除」で税額軽減
2020年度の税制改正で「低未利用土地の長期譲渡所得特別控除」が創設されました。低未利用土地とは、居住又は事業のいずれにも利用されていない土地又は利用状況が周辺と比較して著しく低い土地をいいます。
この規定は利用ニーズが低下した土地が放置され、衛生、治安、景観の悪化に歯止めをかけるべく、有効活用を促すために設けられました。
利用しないのであれば、処分すればいいと考えがちですが、売却する場合には、このような利用ニーズの低い不動産は取引価格がそもそも安く、売却するまでの測量や解体費用ほかの負担が重くなり、もし利益が出た場合にはさらに譲渡所得税が徴課されることから、売主の売却意欲が低下するという悪循環を引き起こしています。
そこで、比較的少額の不動産取引で要件に合致するものに限って、100万円を特別控除するという規定が設けられました。
買主側も、取得コストが低下し、より広い不動産を有効活用できるため、不動産投資促進の可能性が高くなります。
主な要件としては4つあります。
(1)売却価格が500万円以下であること
(2)所有期間が5年以上であること
(3)都市計画区域(都市計画法に基づき整備、開発、保全が必要とされる区域のこと)内にあること
(4)低未利用土地であり、かつ市区町村の確認書が発行されることです。
この規定は、20年7月1日から22年12月31日までの間の譲渡に適用されます。
具体的な例では、売却価格500万円、取得費など30万円の場合の譲渡所得税がこれまで約94万円だったものが、この100万円の特別控除を利用することで約74万円となり、約20万円の譲渡所得税が軽減されます。
不動産の譲渡があった場合は、譲渡をした年の翌年の3月15日までに税務署へ申告書を提出する必要があります。譲渡所得の計算には、土地及び建物の取得価格、譲渡に要した費用などを計算する必要があり、他の所得と分けて計算しなければなりません。専門的な知識が必要になりますので、不動産譲渡の税務に強い税理士へ相談することをお勧めします。
今回の要件に該当する不動産をお持ちの方は、この機会にぜひ検討なさってください。
税理士 清水 智明氏
<税理士法人新宿総合会計事務所プロフィール>
1995年事務所設立。2010年より相続業務を一括で任する「ワンパック相続」®を展開。