介護大手各社によるM&Aが相次いでいる。入居系施設運営数首位のSOMPOケア(東京都品川区)は9月30日、不動産デベロッパー大手の東京建物(同中央区)の介護子会社を買収する。また同日、メディカル一光グループ(三重県津市)は、ライフケア(愛知県一宮市)をグループ化すると発表した。またソラスト(東京都港区)はファイブシーズヘルスケア(神戸市)を、ユニマットリタイアメント・コミュニティ(東京都港区)はアメニティーライフ(同八王子市)を子会社化するなど業界の合従連衡が進む。

 

 

再建ノウハウでさらなる拡大へ

SOMPOケアは、東京建物の子会社、東京建物シニアライフサポート(同中央区)の全株式を取得する。取得予定日は12月1日。親会社は双方業界大手の一角であり、ともに芙蓉グループに属している。

遠藤健社長

 

東京建物SLSは、首都圏1都2県でサービス付き高齢者向け住宅や有料老人ホーム19ヵ所(総定員数2186名)を運営。自社による介護サービス提供や、大手中堅介護会社との提携によりオペレーションを構築してきたが、親会社である東京建物が掲げる事業ポートフォリオの最適化において、介護事業譲渡が最善と判断された。なお、同社の2019年12月期の売上高は50億2800万円、営業利益は1900万円。経常利益は3期連続で赤字が続いていた。

 

 

SOMPOケアの川部弘明執行役員は「東京建物SLSの施設は、東京・神奈川・埼玉の好立地にあり、さらに特定施設も有している。当社もワタミの介護、メッセージを買収して業界に参入し、利益を出す体制になるまでは苦しんだ経緯がある。その分、蓄積したノウハウがある」と語る。本格的な交渉は、新型コロナが広がる直前から行われていたという。

 

 

本件は、入居系施設運営数433棟(2020年8月時点)と最大手の同社にとって、18年の組織再編・同社発足後初の買収案件。サービスラインナップの拡充によりさらなる成長を図る。「今後の拡大には新設もM&Aも考えられる。施設・在宅ともに一定程度のボリュームがあれば承継も積極的に検討していく」(川部氏)

 

 

 

メディカル一光もM&A 売却・譲渡案件増加か

愛知エリア進出、事業規模を拡大

メディカル一光グループで有老やサ高住、グループホームなど28ヵ所を運営するハピネライフ一光は、愛知県を地盤に有老を運営するライフケアの全株式を取得。取得予定日は11月1日。

南野利久社長

 

ライフケアは住宅型有老を14ヵ所運営、居宅介護支援や訪問看護・介護、デイ、福祉用具貸与など幅広く展開してきた。20年2月期の売上高は14億8086万円、営業利益は5835万円。
本件により、介護サービス未展開であった愛知県に進出。「案件によるが、今後もM&Aを検討していく姿勢だ」という。

 

 

 

ソラストは、兵庫県・大阪府でサービスを展開するファイブシーズヘルスケアの全株式を取得した。取得予定日は10月20日。

藤河芳一社長

 

ファイブシーズヘルスケアは、グループホームを中心に19ヵ所を運営、特に神戸市のグループホームではトップクラスのシェアを誇る。19年9月期の売上高は16億9000万円、営業利益は△1億4400万円。20年9月期の営業利益は黒字転換する見込み。ソラストは本件により、神戸・大阪エリア内のサービス拡充を見込む。
同社のM&Aは、8月発表の日本エルダリーケアサービス子会社化、ライフサポートからの事業承継、そして9月発表の本件と続いている。今後も積極的な動きが予想される。

 

 

 

ユニマット リタイアメント・コミュニティは、介護付有老「アメニティーライフ八王子」を運営するアメニティーライフの全株式を取得。取得予定日は21年2月1日。

中川清彦社長

 

同施設は、医療法人社団玉栄会「東京天使病院」に隣接、敷地面積約1万3760平米で定員200名の大型施設だ。なお、アメニティーライフの直近3期は赤字が続いており、20年3月期の売上高は6億1400万円、営業利益は△1600万円。

ユニマットRCは同施設と連携することで、八王子市にある既存拠点とのシナジー効果を見込む。
近年、大手事業者が買収や事業承継などによりスピーディーに規模を拡大している。コロナ禍の影響もあり、経営難や人材不足、後継者不在などの運営リスクが顕在化したことで、事業を手放すことを検討する事業者は増えているようだ。さらに加速する業界再編の中、どのように経営の舵を切るか、各社の動向に注目が集まる。

 

 

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