【連載第89回】「実績評価」への転換

 

今回は診療報酬改定のトレンドから介護報酬改定の方向性について考察していこう。診療報酬改定の最近のトレンドは、人員配置などで評価するストラクチャー評価から、実績(アウトカム)評価への流れの加速化である。そして人員配置についても常勤・非常勤の緩和、専従・専任要件の緩和が始まっている。人口減少に対するため、多様な働き方の整備と、生産性を向上するための実績評価の導入が診療報酬のトレンドだ。

 

 

まず2018年の診療報酬改定では、人員配置の見直しと実績評価への明確な転換が起きた。病院の入院体制を評価する入院基本料は06年以来、主に看護師配置数で決めていた。この入院基本料を18年改定で人員配置による基本部分とアウトカム評価の実績部分の2階建てに分けた。

 

たとえば急性期一般入院料では、基本部分はそれまで患者7人に常時看護師1名の看護7対1の配置から、看護師配置人員を減らした10対1の配置を基本とした。そして2階部分の実績評価には重症患者割合が導入された。重症患者割合が多いほど入院基本料が上がる仕組みだ。また地域包括ケア病棟では、実績部分に自宅からの患者入院割合、回復期リハビリ病棟では実績部分にFIMによるリハビリ実績指数が用いられることとなった。

 

 

さらに20年の診療報酬改定では働き方改革が推進された。具体的には各種加算における常勤・非常勤、専従・専任の要件の緩和が大胆に行われた。たとえば常勤・非常勤の見直し策として、週3日以上かつ週22時間以上の非常勤を許容して、これらの非常勤を組み合わせた常勤換算を可とした。専従・専任要件の緩和として、専従要件の専任要件化、また専従でも兼任できる業務の拡張などを行った。

 

 

実は、介護保険でもこうしたアウトカム評価の動きは、すでに加速化している。VISITやCHASEの動きがそれである。18年度介護報酬改定では、VISITを後押しするためにVISITへのデータ提出を要件とするリハビリマネジメント加算(Ⅳ)も新設された。また18年改定で導入された「ADL維持等加算」ではバーセルインデックスによるリハビリ改善率を加算要件としている。バーセルインデックスはCHASEでも取り入れられている。こうしたアウトカム評価の流れは次回の介護報酬改定でもさらに進むだろう。

 

 

介護報酬加算でも人員配置要件の見直しという点では、すでに、18年改定で夜勤の職員配置加算の要件に、見守りロボットが組み込まれている。次期改定でもアウトカム評価や、加算における人員配置要件見直しは続くと思われる。
診療報酬改定で起きたことは、介護報酬改定でも起きるだろう。

 

 

武藤正樹氏(むとう まさき) 社会福祉法人日本医療伝道会衣笠病院グループ相談役

1974年新潟大学医学部卒業、国立横浜病院にて外科医師として勤務。同病院在籍中86年~88年までニューヨーク州立大学家庭医療学科に留学。94年、国立医療・病院管理研究所医療政策部長。95年国立長野病院副院長。2006年に国際医療福祉大学三田病院副院長・国際医療福祉大学大学院教授、国際医療福祉総合研究所長。政府委員等 医療計画見直し等検討会座長(厚労省)、「どこでもMY病院」レセプト活用分科会座長(内閣府)、中医協調査専門組織・入院医療等の調査・評価分科会座長

 

 

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