【連載第135回 超高齢社会の相続対策】
国税庁は2020年の路線価を7月に公表しました。その際、秋に発表される都道府県地価が、新型コロナの影響を受け大幅に下落したなら、路線価の減額措置を講じるなど、納税者に便宜を図ることを検討していると発表しました。今年の都道府県地価調査は、9月29日に発表されました。新型コロナの影響はどうだったのでしょうか。
都道府県地価調査の地価は、7月1日時点の全国約2万1500の基準地の地価です。今年の7月は新型コロナの影響を大きく受けていた時期で、繁華街などの商業地区には人出が全くなかった頃でした。結果は3年ぶりの下落となり、住宅地、商業地、工業地などの全用途を平均すると0.6%マイナス、商業地で0.3%マイナス、住宅地で0.7%マイナスとなりました。
商業地については、地方圏では昨年上昇に転じていたのですが、今年は0.6%マイナスとなりました。
住宅地については、三大都市圏が0.3%マイナス、地方圏が0.9%マイナスとなっていますが、東京23区は1.4%の上昇となっています。
工業地に限っては、全国平均0.2%プラスと引き続き上昇となりました。
ここ数年は経済も好調だったため、地価も上昇を続けていましたが、新型コロナの影響でストップをかけられた状況であることは明白です。しかしながら、新型コロナは、日本人の働き方や、生活様式を変化させています。テレワークの推進で、都市部に居住する必要性が薄れ、オフィスも都市部に構える必要がなくなり、都市部から地方へ人が流出する傾向にあります。
また、巣ごもり生活を強いられ、インターネット上で買い物をするようになったことで、物流拠点も変化しつつあります。このような生活様式の変化により、今後土地の需要も多様化するのではないかと思われます。地価がどのように推移していくのかは、現時点ではなかなか判断が難しい状況と思われます。
なお、現時点(10月中旬)で、国税庁は路線価の減額措置などの発表はしておりません。今回の都道府県地価調査の結果で2020年の路線価を修正することは、今のところないと考えられます。
税理士 清水 智明氏
<税理士法人新宿総合会計事務所プロフィール>
1995年事務所設立。2010年より相続業務を一括で任する「ワンパック相続」®を展開。