シニア向け分譲マンション「インディペンデンスヴィレッジ成城西」(東京都狛江市、67戸)は、事業主体の管理組合と管理会社が一体となって運営しているのが特徴だ。「管理組合の立場に立って、日常生活上の相談支援など様々なサービスを提供している」と語る管理会社のインディペンデンス キングダムの春藤康仁社長に話を聞いた。

インディペンデンス キングダム 春藤康仁社長
年間約1400件の依頼
―――マンションの管理・運営の特徴は。
春藤 事業主体は管理組合であり、管理組合から委託されて当社がマンションの運営・管理を行っている。当社はそれだけでなく、管理組合の事務局にもなっており、当社の44名の従業員全員が事務局員である。つまり、我われは管理組合と一体となって、管理組合の立場に立って事務局兼マンション運営・管理を行っているのが独特なところだ。
―――マンション管理・運営としては、事務局機能以外に何を行なっているのか。
春藤 分譲マンション共有部分の維持・修繕など通常のマンション管理業務のほか、食事づくり、健康促進、アクティビティイベントなどに加え、「日常生活上の相談支援」「介護・医療など専門職・機関との連携」「家族との連携」「コミュニティづくり」「権利擁護・意志決定支援」などの運営業務を行っている。
―――それらの中で、独自で好評な取り組みは。
春藤 日常生活上の相談支援の一環として、2011年から「あたたかサービス」を提供している。これは、国の制度や介護保険などではカバーできていない入居者の困り事や希望することを、5分125円(税別)で対応するサービスである。従来は無料で行っていたが、「個人対応を長時間行ってもらうのは申し訳ない」との入居者からの声でスタートした。

「あたたかサービス」によるシーリングライト交換
―――サービス内容や件数は。
春藤 19年度は1371件の依頼があった。居室からダイニングまでの送迎が634件と最も多く、以下、居室清掃178件、浴槽のお湯はり83件、買物代行(電話・ネット注文含む)79件、入浴見守り53件となっている。あらゆる困り事に対応しているので1、2件の依頼も多く、依頼種類別では61種類に及んでいる。
この新型コロナ禍では、買物代行が多い。また、10万円の持続化給付金申請が困難な人がたくさんいるということにスタッフが気づき、家族の代わりに申請を代行したりしている。
―――「あたたかサービス」の効果は。
春藤 このサービスがあることにより、高齢者施設に転居するのが先になったり、病院に入院しても、ここに戻れる人が増えている。その結果、健康寿命が長くなっているかもしれない。また、「話し相手」としてこのサービスを利用する人もおり、不安や寂しさの解消にもつながっている。

「あたたかサービス」によるピアノレッスン伴奏
―――今後の重点方針は。
春藤 入居者や家族が抱えている困難に、全社員が気配りして気づき、「あたたかサービス」を取りまとめている運営チームが中心となって解決する組織づくりをしていきたい。