高齢者施設の不動産投資が加速している。9月、三菱UFJリース傘下で国内最大規模の医療・介護特化型投資ファンド運用のヘルスケアマネジメントパートナーズ(以下・HMP/東京都港区)が、介護医療院への投資を実施。10月には、第一生命保険(同千代田区)が、初めて有料老人ホームへの投資を実行した。

 

ヘルスケアマネジメントパートナーズ 村山浩社長

 

 

介護医療院支援も 多角化する投資先

 

HMPが運用する「トリニティヘルスケアファンド」は、医療法人社団向仁会(北海道函館市)が運営する介護医療院「喜郷」(188床、住宅型20室、クリニック併設型)の不動産を9月30日に取得した。取得金額は非公表とされているが、40~50億円ほどとみられる。

介護医療院「喜郷」外観

 

介護保険法改正に伴い2018年度に創設された介護医療院だが、施設数515施設、療養床数3万2634床(20年6月末時点)。介護療養型医療施設に関する経過措置の期限は24年3月末まで延長され、早期の移行に対する移行定着支援加算も設定されているものの、なかなか進んでいないのが現状だ。

 

そうした中での今回の投資に関し、村山浩社長は「この規模で単体の介護医療院の不動産取得・経営支援といった本格的な取り組みは、恐らく全国で初だろう」と語る。同社は投資先として介護医療院を積極的に選定していたわけではなく、介護・医療関連施設の中で対象を定めず幅広く対応していたため、本件につながったという。

 

 

「喜郷は、銀行からの資金調達の状況と、その評価上の問題でバランスシートがよい状態ではなかった。不動産の売却で、BS・資金繰りの改善、銀行の格付け評価を改善できるだろう」(村山社長)。向仁会では、財務健全化が図られたことで今後、さらなる拡大を目指す。

 

「喜郷」については稼働率も向上しており、比較的長期の保有も視野に支援していく方針。出口は上場リートなどへの売却も選択肢の1つだという。
HMPでは、融資なども含めると総出資金額350億円のファンドを運用しており、投資先件数は高齢者施設、医療施設合わせて30件超の実績をもつ。

 

 

安定運営の一助となるか

 

また、第一生命保険は10月21日、SOMPOケア(同品川区)が運営する介護付有料老人ホーム「SOMPOケアラヴィーレ六甲」(神戸市)を21億円で取得した。取得先は大手外資系投資銀行とみられる。本投資は、同社にとって初めてのヘルスケア施設への不動産投資となる。

 

民間企業の運営する介護付有老に対する入居需要は安定的に推移すると見込み、「本物件の運営は、数多くの老人ホーム運営実績を有するSOMPOケアが担うことから、安定的かつ高い投資収益の獲得が期待できると考えている」としている。

 

 

ヘルスケア投資に詳しいKPMGヘルスケアジャパンの松田淳氏は、「社会的責任投資やSDGsでのヘルスケアアセットへの着目に加えて、コロナにより投資家が注力するアセットタイプが変化している」と話す。これまで主流であったオフィスビル・ホテルも先行き不透明。比較的コロナの打撃が少ないヘルスケア施設や、ネット通販の活況により需要が伸びている物流施設に投資が移っているという。

 

 

第一生命が参入 施設供給促進に

また同日、第一生命が福岡市に保有する不動産に、特別養護老人ホームと認可保育所の複合施設を誘致することも発表。保有不動産を活用したヘルスケア施設の誘致は初の取り組みだ。

 

 

新型コロナ感染症拡大以降の国内の介護事業の経営状況について、HMPの村山社長は「感染症対策がしっかりなされていれば影響が少ない事業者が多いが、一方で新規開設の施設などにおいては入居率を高めるまでに予想以上の時間がかかるケースが多い」と語る。今後、大手事業者による寡占化、ファンドによる支援などの事例が増加する可能性も大いにありそうだ。

 

 

 

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