事前登録方式で 利用希望者とマッチング

 東京都立川市、昭島市、武蔵村山市でデイサービスの運営や高齢者の居住支援事業を行うこたつ生活介護(東京都立川市)は、「活き家登録推進事業」を通じ、空き家の発生抑制の取り組みを開始した。地域の治安に重大な影響を及ぼす空き家問題の解消に向けた介護事業者の活動を紹介する。

こたつ生活介護 高齢者住まい相談室こたつ 松田朗室長

 

総務省の「平成30年住宅・土地統計調査」によると、同社の事業地域である昭島市の空き家率は13.3%と、都内トップの国立市(14.8%)に次いで2番目に高い水準となっている。また、国立社会保障・人口問題研究所が2018年にまとめた「日本の地域別将来推計人口(18年推計)」によると、多摩地区においては20年をピークに人口が減少し今後、空き家問題が本格化すると予想されている。そのような地域課題の解決に向け、同社が開始したのが「空き家になるその前に『活き家』登録推進事業」だ。

 

 

空き家急増の多摩地区 早急な対策求める声

活き家登録推進事業では戸建て住宅に住む高齢者、いわゆる空き家予備軍を対象に、在宅での生活が困難になった場合の自宅の扱いや活用方法について、本人の希望を宣言書に記してもらい「活き家」として登録、その実現を支援する。例えば「コミュニティスペースとして活用して欲しい」といった場合には、同社が利用を希望する団体などとマッチングを行う。

 

また、活用のイメージがしやすくなるよう、活き家情報紙を発行するほか、実際の活用事例の見学会などを企画する。活き家登録をする場合には特典として、無料でホームインスペクション(住宅点検)が受けられる。

 

建物の活用は必須ではなく、「取り壊して駐車場に」「売却」とすることもできる。現状では、多くの人が売却を希望するとしているという。なお、宣言書には法的拘束力はなく、記入者が死去した後の話し合いの結果、利用方法を変更しても問題はない。

 

同社では空き家を買い取り、希望する団体へと貸し出してる

 

事業を担当する高齢者住まいアドバイザー松田朗室長は「空き家となってしまってからでは、関係者間の各種調整や修繕などの負担が大きくなり、活用しにくくなります。そのため、空き家発生の抑制が重要になります」と語る。

 

同社では以前から、居住支援事業の入居相談時に、自宅活用方法の提案などを行っていた。また、空き家を買い取り、地域交流スペースとして団体に貸し出していたこともあり、それらの知見を活かし、活き家登録推進事業を開始した。

 

松田室長は「この事業では、入居相談より前の段階から自宅の今後について考えてもらうことがポイントとなっていますが、信頼関係がなければ相談をしてもらえません」とした上で、「その人の生活や価値観などを知る介護事業者だからこそ、気軽に相談できるため、早めの対処が可能となります」と空き家対策に乗り出す意味を語った。

 

 

9月には、東京都の実施する「令和2年度民間空き家対策東京モデル支援事業」に、この事業が採択されており、現在、ホームインスペクションに関わる費用については補助金を活用している。
こうした空き家問題について、10月28日に東京都が開催した第3回東京都住宅政策審議会企画部会においても、委員から「早期の対策が重要」との意見が挙っている。

 

 

加えて、明治大学政治経済学部教授の野澤千絵委員は、「区部と比較すると、対策計画がなされている市町村が少ない」と問題点を指摘(表参照)。その理由について「技術職の不足や、財政難があると考えられる」と見解を述べた。

 

実際に、総務省が発表した「全市町村の主要財政指標(平成30年度決算)」によると、23区の経常収支比率(収入の内、人件費、扶助費、公債費などの経常的な経費に、どの程度使用されたかを示した比率)の平均が78.8%であるのに対し、多摩地区の平均は92.7%と財政の硬直化が進んでいる。

 

空き家問題の解決には「発生抑制」が重要となり、早急な対策が求められる。しかし、自治体による対策では財政的な問題がネックとなり、スピード感のある対応は難しい。介護事業者には今後、発生抑制の役目も求められそうだ。

 

 

 

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