医療連携や重度者対応 独自の研修制度も
全国に464拠点を構え、訪問入浴や訪問介護、デイサービスなどを展開するアースサポート(東京都渋谷区)。中でも訪問入浴の拠点数は256拠点と国内トップだ。2021年度介護報酬改定および24年度ダブル改定を見据えた訪問入浴事業や、同社の人材採用・育成、中国での展開などについて、森山典明社長に話を聞いた。

アースサポート 森山典明社長
──10月末に厚生労働省が発表した介護事業経営実態調査では、収支差率が改善した5サービスに訪問入浴が含まれていました。
森山 わずか1.0%の改善なのでそう変わりません。訪問入浴においては、訪問時の利用者の体調に応じて清拭・部分浴対応となった際の「3割減算」について、減算幅が見直される方向性となりました。必要なことではありますが、そもそも体調が悪ければその日は中止にして日程変更する利用者が多く、この見直しによる効果に期待するといったことはないでしょう。24年度改定では大きな改革が行われると思いますが、訪問入浴は要介護度4、5の利用者が8割を占めるサービスであり、かつ1年間に約半数の利用者が入れ替わります。専門性も設備も必要かつ、新規利用者を獲得し続けなければならず、安定経営のためにはノウハウが必要な事業だと捉えています。
──訪問系サービスでは人材確保が深刻な課題となっています。採用・定着の取り組を教えてください。
森山 訪問入浴は、ほかの介護サービスと比較して非常に利用者満足度が高く、当社が実施している利用者アンケートでも、約9割が「満足」と回答しています。入浴前後で目に見えてわかる表情・状態の変化や利用者、家族の反応には大きなやりがいがあります。訪問入浴は看護師1人、介護職2人の3人チームで行いますが、看護師にとっても介護サービスの中では専門性が高くやりがいが大きい点で、モチベーション向上につながります。看護師採用は派遣を活用しており、これが奏功しています。かつては、当社のサービスの中でも訪問入浴は職員から人気が低く課題でした。
しかし、
①刷新した制服や訪問入浴車のデザイン
②専門性の高さ
③チーム作業のやりがい
④キラキラと活躍する先輩
の4点を打ち出した結果、これが職員のニーズに合致したようで、現在では社内で最も人気のサービスとなり、高いプライドをもってサービスに臨んでくれています。

訪問入浴チームの制服
──高い専門性を備えるための研修制度などについては。
森山 当社独自の研修制度は充実しています。中でもスタッフのレベルを5段階で評価する「レベル認定制度」に特徴があり、スタッフ一人ひとりの力量に応じた個別指導研修を行っています。レベル1~5までの要件が設定されており、レベル4は「指導者」、レベル5は「特任指導者」としてのスキルが認められ、指導者手当も支給します。重度者の身体介助や医療連携などの専門性とモラルやコミュニケーション力などの人間性を高めること、担当する新人を6ヵ月間でレベル3まで育成するという2つの課題があり、レベルアップを見極める認定審査会も非常に厳しい。しかしこれを通過した職員のモチベーションは高くなります。また、訪問介護向けの個別指導研修「スキル認定制度」もあり、各サービスで必要なスキルを的確に身につけられるよう制度を整えています。
中国拠点も展開加速
──中国、台湾における事業展開の現状を教えてください。
森山 現地企業との合弁会社で、現在は上海に2拠点(デイ、訪問入浴、訪問介護、福祉用具、住宅改修、認知症予防事業、研修・運営コンサル事業)、台湾に1拠点(訪問入浴、訪問介護、居宅介護支援)を運営しています。これに加え、四川および山東にそれぞれ1拠点ずつ、開設・認可を経て準備期間に入っているものがあります。新型コロナ禍ではありますが、オンラインなどでコミュニケーションを図り、統括責任者が指揮を執りながら着実に進めています。
──訪問系サービスの今後について。
森山 訪問系サービスは1件1件に対応するものであり、スケールメリットがありません。だからこそ報酬改定に左右されにくく、安定した経営ができる。逆に、地域に密着した小規模事業者にこそ勝ち抜く経営ができるのだと思います。当社では通所や施設も運営していますが、メインは訪問事業として、サービスの質を保ちつつ、さらなるニーズに対応できるよう展開していく考えです。