「プラス改定すべき事情ない」に反証を

 

次期改定に向けた議論が大詰めを迎える中、報酬単価に関する議論も活発化しています。10月30日の介護給付費分科会では、「令和2年度介護事業経営実態調査結果(案)」及び「新型コロナウイルス感染症の介護サービス事業所の経営への影響に関する調査研究事業(速報)」が発表されました。

 

介護サービス全体の収支差率は、昨年対比でマイナス0.7%となる2.4%という結果であり、介護人材の不足による人材関連費用の増加等が悪化要因となっていると思います。この結果は本年3月の決算数字であり、コロナ禍による影響が加味されていません。コロナ禍による経営調査の結果を見ると、4月・5月には通所系・短期入所系サービスを中心に収入面が大きく減少しているとともに、経費面でも人件費を除く経費が昨年対比で1%増加しており、介護事業者の収益環境は一層厳しい局面を迎えています。

 

 

他方で、11月2日に開催された財政制度等審議会財政制度分科会において、財務省からは、次期改定に向けて「プラス改定をすべき事情は見出せない」とする提言がなされました。その論拠として、
①コロナ禍で更なる国民負担増とするべきではない
②介護事業経営実態調査における収支差率は昨年対比ではマイナスであるものの、他産業における中小企業平均値と遜色がない
③コロナの影響調査での経費増も軽微なものであり影響は限定的である
の3点が示されました。

 

 

 

財政規律を整え、持続可能な社会保障制度の確立に向けて、報酬の適正化は必要ですが、現在の人材関連経費の高騰と、制度の複雑化に伴う業務工数増、事務負担増の中で、単純に報酬抑制されると多くの介護事業者はサービスの継続ができなくなります。報酬抑制は、サービスの質を落とさずに、制度改革による事業者のコスト及び業務工数の削減を同時に実現する環境を整えた上での実行が必須であると考えます。

 

今回の財務省からの提言に対して、介護業界は、欧米のような感染爆発が日本で生じていない主たる要因の1つに『医療崩壊を手前で食い止めている介護現場の頑張りが間違いなくある』ということを、しっかりと反証すべきです。

 

 

コロナ禍における経営的な影響は、もともと収益性の低い介護事業においては、軽微な影響でも深刻な経営打撃へと繋がります。加えて、介護現場が感染リスクと隣り合わせの中、地域を支え、感染爆発を抑える役割を担っていることに適切な評価をしてほしいと思います。いずれにせよこの年末年始の政治情勢も踏まえて、報酬単価は決定されますので、今後益々注視していくべきです。

 

 

斉藤正行氏 プロフィール
2000年3月、立命館大学卒業後、株式会社ベンチャーリンク入社。メディカル・ケア・サービス㈱の全国展開開始とあわせて2003年5月に同社入社。現在の運営管理体制、営業スキームを構築し、ビジネスモデルを確立。2005年8月、取締役運営事業本部長に就任。2010年7月㈱日本介護福祉グループ副社長に就任。2018年4月㈱ピースフリーケアグループ代表に就任。2018年6月、介護業界における横断的・全国的組織となる一般社団法人全国介護事業者連盟を結成。㈱日本介護ベンチャーコンサルティンググループの代表を務めている。

 

 

 

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