---第23回  都市部で進む少子高齢化---

「生きる」ことのデザイン
相談の内容多様化

コロナ禍で恐れのエネルギーが充満している世界とは裏腹に、渋谷は訪れるたびに姿を変え、100年に一度という再開発が着々と進んでいる。新しいビルは、どれも見上げるようにそびえ立ち、外観も個性的で煌びやかだ。

その1つである「SHIBUYA-FUKURAS」(東急プラザ渋谷)は、新たなランドマークとして昨年12月にオープンしていたらしい。2月頃からコロナ禍に突入していたせいか、わたくしは完成に気づかずにいた。

 

 

インバウンドを見込み、国際競争力を意識したコンセプトのテナントが目立つ。例えば、1階には、セレクトショップの草分け的存在の「ビームス」が、日本をキーワードにベーシックアイテムを揃えた「ビームス ジャパン」を出店し、ソフトバンクロボテックスは、初の飲食店となる、人とロボットが共に働く「Pepper PARLOR」をオープンした。ロボットがおもてなしをしてくれる心地良いカフェで、未来を体感できるのだ。若者の街だった渋谷は、多世代共生のエンターテインメントシティへと進化を遂げつつある。

 

 

しかし、一見艶やかに進化する都会には、別の顔もある。現在、足を運んでいる都会派の感度が成熟した大人たちが、数年後には間違いなく高齢者となる。つまり、少子高齢化は、地方ではなく都市部で進んでいるという現実。高齢者の増加が引き起こす、医療、介護、社会保障、住居、認知症などの問題や人口比率の変化が及ぼす様々な影響が、あと数年で表面化する。

 

 

そこで、生前から老後を客観的に把握する意識が高まってきたのが、2009年に〝終活〞に関する書籍が刊行され、その2年後、映画「エンディングノート」が公開された頃からだった。日本ではタブーとされた死生観を語り、遺産相続について遺言書を残すなど、最後まで自分らしく生きるために『死』と向き合う活動が提唱されはじめた。そして昨年末、ついに、この渋谷のランドマークにも、終活相談サロン「LIFE STORIES」がオープンした。

 

落ち着いた雰囲気の「LIFE STORIES」

 

 

これは、渋谷がもう、若者たちだけの街ではないという、象徴的な現象だ。運営母体は、1969年創業の冠婚葬祭業を中心にホテル、レストラン、保険などのサービスを展開するメモリードグループ。サロンをオープンしてみると、予想外の様々な相談が持ち込まれてくるという。相談ランキングの1位は、なんと手元供養品。高額なお墓や戒名は不要、最愛の人のお骨は手元に置いておきたい、仏壇は小さくモダンなものに買い替えるなど、納骨や供養に対する考え方も多様化している。そして2位は施設紹介だという。そのほか、お墓の引越しや海洋葬、樹木葬、未来的な宇宙葬まで、新しい供養の形にも幅広い相談を受けている。

 

 

店長の平山氏は、「最近ではよく見かけるようになった『保険の窓口』のような全国展開を目標に、『終活相談サロン』は、気軽に出入りできる、ひとつのコミュニティのような存在を目指したい」と語る。
周辺エリアをつなぐ連絡デッキから見下ろす風景が、なぜだろう、進化する街にもかかわらず、どこか廃退の匂う未来に映るのは、わたくしだけだろうか。

 

 

 

小川陽子氏
日本医学ジャーナリスト協会理事・広報委員。国際医療福祉大学大学院医療福祉経営専攻医療福祉ジャーナリズム修士課程修了。同大学院水巻研究室にて医療ツーリズムの国内・外の動向を調査・取材にあたる。2002年、東京から熱海市へ移住。FM熱海湯河原「熱海市長本音トーク」番組などのパーソナリティ、番組審議員、熱海市長直轄観光戦略室委員、熱海市総合政策推進室アドバイザーを務め、熱海メディカルリゾート構想の提案。その後、湖山医療福祉グループ企画広報顧問、医療ジャーナリスト、医療映画エセイストとして活動。2019年より読売新聞の医療・介護・健康情報サイト「yomiDr.」で映画コラムの連載がスタート。主な著書・編著:『病院のブランド力』「医療新生」など。

 

 

スポンサーリンク

この記事が気に入ったら
フォローしよう

最新情報をお届けします

Twitterでフォローしよう