「介護保険の受け皿にしないで」訴え

 厚生労働省は10月、「要介護認定後も介護予防・日常生活支援総合事業(以下・総合事業)のサービスを受けられる」とする介護保険法の一部改正省令を各都道府県などに対して通知した。これについて、各業界団体などから批判と撤回を求める声が挙がっている。こうした中で、ケアコミュニティせたカフェは11月20日、世田谷区における総合事業の対応などを議論する緊急フォーラム「どうするつもり?総合事業」を開催。総合事業が抱える課題や現状について、事業者やアカデミア、行政など様々な立場から発言がなされた。

 

 

 

厚労省による改正省令は、要介護認定を受けるとそれまで受けていた総合事業のサービス利用が継続できなくなる点について、「本人の希望を踏まえて地域とのつながりを継続することを可能とするため、弾力化を行うことが重要」との意見を踏まえてのもの。21年4月1日施行予定だ。

 

 

しかし、本件について寄せられたパブリックコメントには「要介護者に対する介護給付を総合事業に移行するための布石ではないか」「現状でも十分なサービスが提供できていない中で、対象を拡大することは適切でない」といった批判の声が多い。公益社団法人認知症の人と家族の会は厚労大臣宛に、「要介護者の介護保険外しの道を拓く改正省令は撤回すべき」と緊急声明を出している。

 

 

 

また、11月の財政制度等審議会財政制度分科会でも「残された課題」として「軽度者へのサービスの地域支援事業移行」といった言及が見られる。18年度介護報酬改定では見送りとなったこの議論が、24年度改定に向けて再びなされるだろうとする見方も強い。

 

 

しかしその受け皿として期待される総合事業は、15年の法改正で創設されて以来、担い手不足や対象者の見極めなど多くの課題とともにある。今年4月の厚労省の調査研究事業結果によると、19年6月末時点で「従前相当以外の多様なサービスを実施している市町村は、訪問型で1051市町村(61.1%)、通所型で1193市町村(69.4%)であり、住民主体型サービスBの実施は訪問・通所ともに約15%にとどまっている。

 

 

11月に世田谷区で行われた緊急フォーラム「どうするつもり?総合事業」では、市民福祉情報オフィスハスカップ主宰の小竹雅子氏、淑徳大学コミュニティ政策学科教授の鏡諭氏、NPO法人暮らしネット・えん代表の小島美里氏のほか、世田谷区高齢福祉部介護予防・地域支援部課長の佐久間聡氏らが登壇。

 

 

 

制度と実情が乖離、担い手不足等課題

小竹氏は、改正省令について「要介護者の給付を受ける権利を守ってほしい」と訴えた。埼玉県新座市で総合事業を実施する小島氏は「新座市では、『従前相当』と『A型』のみで、すべて従前サービスの事業者が提供している。『多様な主体』によるサービスはない」として、地域差を指摘。また、「介護事業所が総合事業を引き受ければ収入が減少する。さらにボランティアで提供可能なサービスとされてしまうと、さらに介護職の低賃金が固定されるのでは」と見解を述べた。

 

 

参加者を巻き込んだ議論では、世田谷区内外の事業者から「ボランティアに加わってくれる人の将来をどう考えているのか」「総合事業は専門性を否定する事業。身体介助以外はボランティアでよいだろう、という論調は非常に遺憾」などの意見が行政側に投げられた。

 

世田谷区の佐久間氏は「まずは3年後に活躍してもらうことを見越して、現在は育成に力を入れている」「ボランティアでよい、という意味ではなく、地域住民の力を借りたい」と回答。参加者らはこれに「住民の力を借りるというのが全ての混乱のもと。例えば八王子市では、サービスBをなんとか広げようと介護保険財源を使わずに庭木の選定などをしているような状況。要支援者が訪問型Aのヘルパー利用にありつけず、ただ待っている」と制度とかけ離れた現状を訴えた。

 

 

鏡氏は議論を踏まえ、「皆が納得のいく給付と負担の関係を作っていく必要がある。ボランティアなど多様な主体が社会を豊かにするとの考えには賛成。しかし、それを介護保険の受け皿にはしないでほしい」とした。

 

 

緊急フォーラムが開催された

 

 

 

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