東京商工リサーチ(東京都千代田区)は12月3日、2020年「老人福祉・介護事業」の倒産状況を発表した。1月~12月2日までの倒産が112件に達し、年間最多だった17年と19年の111件を上回り、最多件数を更新。このペースで推移すると、年内に120件を上回る可能性が出てきた。業種別では、「訪問介護事業」が52件(構成比46.4%)と半数近くを占めた、「通所・短期入所介護事業」が36件(同32.1%)と増加した。
「老人福祉・介護事業者」の倒産が12月2日までに、年間過去最多を記録した。小規模な訪問介護事業者、デイサービスなどの通所・短期入所介護事業の倒産が増加。今年は新型コロナウイルス感染拡大で、感染を恐れた利用控えもあり、経営環境が大きく変化した。
新型コロナ前の売上高に回復できず、影響が長期化していることで、政府による新型コロナ支援の効果も次第に薄まっている。新型コロナを要因とする倒産は、10月まで累計3件にとどまっていたが、11月はデイサービス事業者など4件が倒産、ここにきて急増している。
東京商工リサーチでは「新型コロナの影響により経営体力が落ち込む事業者が増えている。新型コロナ支援で調達した借入金で一時的に資金繰りが改善しても、業績回復が遅れると過剰債務を解消する目途が立たず、将来の負担増から経営意欲の減退につながることが危惧される」としている。
負債総額は135億6300万円(前年比16.1%減)と減少。負債1億円未満が90件(構成比80.3%)、従業員5人未満75件(同66.9%)など、小・零細事業者を中心となったためだという。
また、1月~10月までの休廃業・解散は406件、2ヵ月を残して19年通年(395件)を2.7%上回った。経営不振や人手不足、コロナ禍での事業意欲の喪失などを背景に、経営体力のあるうちに事業を止めるケースが増えたとみられる。
このペースで推移すると、年内の「休廃業・解散」は、過去最多の18年(445件)を上回る見通し。倒産と「休廃業・解散」の合計が、初めて600件を超える可能性がある。