≪連載第135回 課題解決!介護事業相談室≫

介護保険最新情報Vol.909『新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止に配慮した介護予防・見守り等の取組の推進について(再徹底)』によると、高齢者の心身の状態について、令和2年度(新型コロナウイルス感染症影響下)は、令和元年度(新型コロナウイルス感染症影響前)と比べ、認知機能低下やうつに関する項目の該当者が約5%増加した傾向がみられています。

 

 

コロナ禍での高齢者の介護予防・見守り等が課題となっている中、私の故郷である富山も35年ぶりの豪雪で、毎年研修のお仕事を頂いている高岡市の社会福祉法人の事務長から次のような相談を受けました。

 

 

「手の力がもうない位雪かきをしています。この雪では送迎が出来ないので、デイはお休みにしました。大きな減収です。職員の出勤状況も朝早く来て雪かきを手伝ってくれる人もいれば、雪で渋滞にはまりギリギリに来る人などさまざまです。豪雪を理由に、遠くから通っている職員が退職を申し出るのではないかと心配しています。

 

また、私の向かいの高齢者世帯の家も雪で埋まっており、電話連絡はしていますが、非常に心配です。昨日も旦那と一時間半かけて向かいの家の雪かきをしてきました。デイが休みになった場合、高齢者の方はどうしたら良いでしょうか」

 

◆ ◆ ◆

 

社会福祉事業は人々の健康と生活を守る活動ですから、業務は日々継続される必要があります。しかし災害や事故は、それ自体による危険だけでなく、ときに福祉事業を中断させることで、利用者をより弱い立場においてしまいます。

 

 

東日本大震災では、多くの福祉関係者が事業継続に並々ならぬ努力をして、被災地の福祉を守っています。
しかし震災以前から事業継続の取組みを行っていた福祉事業所は多くはありませんでした。福祉事業に限らないことですが、事業継続の備えを進めることで、将来の災害時により多くの業務を継続させ、より多くの方を支援できる可能性があります。

 

災害時は想定通りの対応ができるとは限りません。それでも「サービスを一時的にどこまで減らすか」「その業務量を何人のスタッフで行うか」などを検討しておくことは、想定と違う状況になった時の判断の助けになります。

 

 

大災害では、事業継続の取組みをしていても、事業が一時的に止まることがあるかも知れません。仮にそのようなときでも、中断の影響をより小さく、回復をより早くできます。事業継続の取組みを進めていた事業者の多くが、東日本大震災の際に有効だった取組みとして、初動対応の手順を定めていたことや、発災後の対応を訓練していたことをあげています。

 

 

一方で、備蓄体制や交代要員、代替の施設で業務を続ける準備は、充分ではなかったということで、見直しがなされています。社会福祉の事業継続に関して重要なポイントは、小規模な事業者が多いので、一法人単独で対応できることは限られることです。

 

だからこそ同業者や異業者との連携が重要になります。社会福祉の業務には、地域性の違いはありますが、一般に共通する部分が多く、同業者の取組みを参考にして取り入れやすい面があります。つまり、互いの事業継続の取組みを参考したり連携したりすることで、すべての対策を自法人だけで進めなくても済むのです。

 

 

事業継続という視点でなくても、利用者の福祉を徹底して考えれば、あらゆる事態を想定して事業を継続できるように備えると思います。また、人命の安全を最優先に考える点で、事業継続と防災活動は共通する部分があります。つまり従来から福祉関係者が実践している活動や価値観のなかに、事業継続と共通するものがあるはずです。

 

 

新たな取組みでなくても、既に行っている活動で事業継続に役立つことは、そのまま利用すれば結構です。むしろ紙の上の計画より、実行して習熟している活動こそが、いざというときに役に立ちます。計画だけで終わらず、活動が行われることが重要です。

 

 

 

伊藤亜記氏
㈱ねこの手 代表

介護コンサルタント。短大卒業後、出版会社へ入社。祖父母の介護と看取りの経験を機に98年、介護福祉士を取得。以後、老人保健施設で介護職を経験し、ケアハウスで介護相談員兼施設長代行、大手介護関連会社の支店長を経て、「ねこの手」を設立。

 

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