2020年11月5日をもって上場廃止となったニチイ学館(東京都千代田区)。取締役や監査役にベインキャピタルの杉本勇次氏らを迎え、新たな経営体制で組織再編に向かう。介護業界においてトップの売上を誇る同社の今後のサービス展開や経営戦略などについて、黒木悦子専務執行役員に話を聞いた。

ニチイ学館 黒木悦子 専務執行役員

 

 

―――非上場化に係る意向と事業への影響を教えてください。

黒木 当社グループが今後、中長期的なさらなる成長、企業価値向上を実現するためには、既存事業の収益力強化に加え、今後成長が期待される領域への経営資源の投入が必要です。一連の施策を同時かつ迅速に実行していくためには、社外からの人材や経営ノウハウを活用し、短期間で着実に実行できる体制を構築することが必要との考えに至りました。
株式を非公開化することにより、総合職の新規採用などに影響が生じることは考えられるものの、当社がこれまで培ってきたブランド力・知名度により、人材確保に与える影響は大きくないと考えています。

 

 

―――新型コロナ禍における影響について。

黒木 第1波ではデイサービスなどでやや利用控えがありましたが、6月以降、通常の稼働率に戻っています。グループホームや有料老人ホームなどの施設では、昨年10月以降、国の方針に伴い最少人数・短時間での面会を解禁しつつ、引き続き全施設でオンライン面会を取り入れています。

 

 

訪介拠点を分割 在宅分野強化へ

 

―――強化しているサービスは。

黒木 当社の強みである在宅介護分野を最大限強化しています。中でも訪問介護の分割新設により、訪問介護拠点数は19年6月末比で約400ヵ所増加、21年3月期第1四半期の間にも15ヵ所増え、約1400拠点となっています。網目に置いた複数の拠点で、1人の利用者を支えていけることが分割のメリットだと捉えています。施設系サービスについては、「在宅を補完する」ための施設と捉え、GHに注力して整備してきました。今期は2ヵ所開設し、現在282拠点です。在宅で支えきれない認知症介護のニーズに対応しつつ、各エリアにおける一連のサービス提供を目指します。

 

 

 

―――エリアについて、具体的には。

黒木 現在全国に支店が94あり、支店ごとにエリアを設けています。各エリアで地域包括ケアシステムを描きながら、分散していた居宅介護支援事業所をセンター化し、集約して効率化を進めていきます。近隣の事業所を集約することで、1事業所に3~4名ケアマネジャーを配置し、質の向上に努めます。

 

 

 

―――そのほかのサービスの展開について。

黒木 デイはすでに網羅しており、新設は考えていません。一方で、昨年より施設の老朽化に伴うリニューアルと併せて営業力を高めていく考えです。訪問看護及び看護小規模多機能については、看護師の人材確保やオペレーションの難しさから、他社との連携に方向性を変更しており、積極的な展開は予定していません。小規模多機能は、GH併設の施設が多く、現在58ヵ所あります(看多機含む)。小多機単体では採算性が低いため、地域のニーズに応じて、GHとセットで開発していく方針です。
有老についても、介護付、住宅型ともにサ高住含め新設は推進していません。地方では飽和状態である一方、市場がある首都圏・関西には、当社の低価格な「きらめき」ブランドにマッチする物件があまりない現状です。ニチイケアパレスでは、首都圏を中心に今後も拡大する方針で、今期も1ヵ所新設予定です。

 

 

主婦・シニア層の活躍も

 

―――人材採用戦略を聞かせてください。

黒木 19年、本社に人材開発事業本部(現在の人財開発事業本部)を設置し、採用・教育に特化して改良を行っています。コロナ禍で人材流入が見られていることは確かで、初任者研修などの受講生も増加しています。新卒は、20年も例年と変わらず約200人を採用しました。全国にある現場での採用では、専門学校卒、高卒などの人材含め地場に密着した採用を行っています。
多様な人材に活躍してもらえるよう、外国人や主婦、シニア層の採用にも数年前より取り組んでいます。特に主婦層は介護との親和性が高く、研修の受講生も増えています。シニア層が早朝、夜間の短時間勤務に入るという働き方もあります。

 

 

ICT活用に力 地域連携を推進

 

―――21年度介護報酬改定に向けて。

黒木 ICT活用、具体的にはリモート会議の整備など地域ネットワークを繋ぐものを積極的に改変しています。加算では、特定処遇改善加算、居宅介護支援事業所の特定事業所加算、デイの中重度者ケア体制加算、認知症加算を引き続き積極的に取得していく考えです。

 

 

 

―――保険外サービスの取り組みについては。

黒木 14年に家事代行サービス「ニチイライフ」ブランドで保険外サービスを拡大し、共働き世帯などに顧客層を拡大してきました。また、東京、神奈川の国家戦略特別区域内におけるフィリピン人スタッフによる家事代行「サニーメイドサービス」も提供しています。ただし、あくまで「介護」「医療」「教育(人材養成)」「保育」の柱は変わりません。現在、全社売上(連結)における介護事業の売上は52%を占めており、基幹事業に注力するべく事業整理を行っているところです。

 

 

 

―――今後のM&Aについての考えは。

黒木 現在も、コロナ禍の影響や担い手不足、後継者問題などにより事業所を閉鎖する事業者からスタッフや利用者を引き受けているケースは多々あります。そうした案件に加え、規模の大小に限らず、当社の事業・エリアに合うお話であれば、しっかりと検討していく方針です。

 

 

 

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