新型コロナにより、現場の職員は通常の業務に加えて、感染症対策も行わざるを得なくなった。職員の業務負担はさらに増し、今まで通りの運営を維持することが難しくなってきた。Withコロナ時代に、介護経営に求められる変化について考える。

 

 

新型コロナウイルス感染症への警戒が続く中、東京都世田谷区が介護事業所の従業員などを対象に昨年10月以降、行なっているPCR検査(社会的検査)が耳目を集めている。

このスキームでは、事業所内に陽性者が発生した場合の随時検査のほか、他者との接触を避けがたい介護現場などの職員がより安心して働けるよう、希望すれば無症状でもPCR検査が受けられる。

 

希望者のうち3159人に検査を終えた12月14日現在、陽性率は全体で1・7%にとどまっており、現場での感染症対策の徹底がうかがえる。

 

一方、同時点までにこの社会的検査によって判明した陽性事例は、全10件、53名。うち1件(入所施設)では、無症状ながら10名の陽性が判明した。

 

 

無症状クラスター発生後、同施設ではほかの職員や入所者について検査を行いつつ、手指の消毒やマスクの着用など感染対策を徹底した上で、運営を継続。同一事業者が運営するデイサービスは約1週間停止したものの、その後は通常通りサービスを提供している。

 

 

依然、人手不足 人材流入に期待

 

昨年は特に、感染症対策で人手不足が深刻化しており、新型コロナの陽性者が出れば、「介護崩壊」は免れない状況だ。厚生労働省の「一般職業紹介状況」によると、20年10月時点で有効求人倍率は1.04倍だが、介護サービスに限れば3.86倍と高い水準のままだ。特に深刻なのが訪問介護で、15.03倍となっており、人手不足の解消は喫緊の課題となっている。

 

一方で、コロナ禍により飲食業や旅行・宿泊業などへ影響が出ていることから、それらの業種から介護分野へ人材流入が予想され、介護業界にとっては人材確保の好機となっている。

 

 

これを受け、厚労省では来年度から「介護職就職支援金貸付事業」を開始する。これまで他業種で働いていた介護未経験者で、かつ職業訓練機関で介護職員初任者研修などを修了した人を対象に、上限20万円を貸し付けるもので、2年間現場で職員として仕事を続ければ、全額免除になる。

 

 

人手不足の解消には業務の効率化も必要だ。そこで、施設などで導入が進んでいるのが、「介護助手」だ。介護助手は、介護専門職が利用者のケアに集中できるように、清掃や食事の配膳などの介護周辺業務を行う人。その担い手として、元気高齢者や障害者などが注目されている。

 

 

介護現場では今後、転職者を始め、高齢者、障害者などを職員として受け入れることになると予想される。その際に重要となるのが職員教育だ。

 

 

未経験者の教育課題 eラーニングに注目

コロナ禍前の様に、対面・集合研修を実施することが難しくなっている現状では、eラーニングなどを用いた「オンライン研修」のニーズが高まっている。オンライン研修には感染症対策のほか、わからない箇所は繰り返し確認するといった、自分のペースに合わせた学習ができ、様々なレベルの人に対応できるメリットなどがある。

 

 

実際に、高齢者住宅新聞社が5月に実施したアンケートでは、「今年度入社した新卒に対する集合研修等の対応」について、セントケア・ホールディング、ソラスト、SOMPOケアの3社は集合研修からWEBに切り替えたと回答している。

 

 

自粛ストレス 職員の精神ケア

 

現場では、施設内の消毒、オンライン研修のような非接触型のコミュニケーションの導入、業務体制の見直しなど、様々な新型コロナ対策を講じており、介護職員の負担も増している。

 

 

UAゼンセン日本介護クラフトユニオン(東京都港区)が昨年11月に実施したアンケート調査では、「GoToも使えず介護職として自粛を強いられるストレスで精神的疲労が強くある」「家族から面会の強い希望があり、その対応の中で家族からキツイ言葉を受けた」といった声が多く寄せられている。今後、職員のメンタルヘルスケアが一層求められるだろう。

 

 

職員へのサポートとして、セントケア・ホールディングは昨年10月、勤務形態・職種問わず、正社員および非常勤社員約9300名を対象に、最大2万円を支給している。ニッソーネット(大阪市)が昨年9月に実施した介護職員アンケート調査では、「現場への施策で最優先に行って欲しいこと」の問いでは「慰労金の支給」が最多となっていることから、その効果に期待がかかる。

 

また、公益社団法人全国老人福祉施設協議会(東京都千代田区)では、介護職員が電話やメール、SNSなどで悩みを産業医に匿名、無料相談できる窓口「JSここメン」を設置しており、職員のメンタルをサポートしている。

 

 

 

「ダイバーシティ」取組 内定者も関心

 

■ケアサポート

埼玉県を中心に1都3県でデイサービスやショートステイなど34施設を運営するケアサポート(さいたま市)は、人材育成の取り組みの一環として障害者を雇用し、農園でハーブや野菜を栽培している。介護事業者として、法定雇用率を満たすための雇用ではなく、収穫物の販売という目的を明確にした、「社会的やりがい」や成長を感じられる場所づくりに注力している。取り組みに興味を持った内定者や職員などが農園に見学に訪れることもあるといい、多様性を尊重する企業姿勢が魅力になっているようだ。

 

 

千葉県柏市の貸し農園を活用した「けあさぽーと農園」の運営は、3年前に始まった取り組み。現在3名の障害者が勤務する。始めは各種野菜を栽培し千葉県内で運営する施設に食材として提供していた。しかし、収穫量や梱包にかかる時間にばらつきがあるなど、食材を利用する施設側でも献立の調整が難しく、提供することを断念。その後、新たに野菜の虫除けとして植えていたペパーミントに着目。葉を乾燥させてハーブティーにすることで消費期限を気にせずに済むようになった。現在は来客用のプレゼントに活用しており、最終目標である商品としての販売や施設への提供に向けて手段を模索している。

 

 

農場長として障害のある職員をサポートする青柳陽子氏は、外部の農場見学を企画したり、植物の知識や農業と世界経済の関わりなどについて、それぞれに負担のない範囲で伝えたりしている。「目の前の仕事が外部や社会とつながっていることを実感し、やりがいや楽しさを感じてほしい」と話す。

 

 

 

離職防止のポイントは“誰を採用するか”

 

■ネオキャリア

人材サービスを手がけるネオキャリア(東京都新宿区)は、介護専門の求人サイト「介護求人パーク」を運営している。ヘルスケア事業開発部の北浦健太部長に人材確保のポイントを聞いた。

ネオキャリア ヘルスケア事業 開発部 北浦健太部長

 

―――介護人材確保のポイントは。

北浦 介護施設が職員の確保や離職防止に取り組む上でのポイントは「誰を採用するか」です。スキルや資格も重要ですが、施設で大事にしている理念や方針に共感してくれる人材を採用することが「想像と違った」「前職とやり方が違っていた」などのミスマッチを防ぐ上で大切です。求人を行う際には、施設長や職員が目指している施設の姿や、どんな想いを持って働いているかを可視化することが重要です。介護求人パークでも、待遇などの募集条件だけではなく、求人側の理念や想いなどを求職者に伝えることを重視して求人原稿を作成しています。

 

 

 

―――コロナ禍を受け、サービスに変化は。

北浦 他職種からの転職者や未経験の求職者の増加を受け、11月に業界特化・地域密着型のポスティング広告サービス「カイポス」を新たに始めました。これまでは、ITが苦手であまりスマートフォンを使わない年代や主婦層などに求人情報が届きにくいという課題がありました。今回、新たにチラシにQRコードを掲載して介護求人パークと連動させることで、より幅広い求職者に訴求することができるようになりました。

 

 

 

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