---第24回 幾星霜を経て受けとった人生最高の贈り物---

 

アルツハイマーを患う昔の恋人
真実の愛が奇跡を起こす

 

世界が静かな年明けとなった2021年。例年よりも厳かな空気につつまれた新年にふさわしく、大人がグッとくる、とっておきのラブストーリーをご紹介したい。

 

 

70歳の元演劇評論家のクロードは、娘も認める切れ者。妻を亡くし、ロサンゼルスの郊外で近所の親友シェーンとシニアライフを生き生きと過ごすある日のこと、思いがけなく有名舞台女優のリリアン・ブランシ
ュ(以下、「リリィ」)が、アルツハイマーで施設に入居したことを知る。リリィは、忘れられないかつての恋人だった。二人の輝かしい想い出が蘇る。「本当に愛していた…今でも」この気持ちを伝えるため、クロードはとんでもない嘘を思いつく…映画「43年後のアイ・ラブ・ユー」。

 

★監督・脚本:マーティン・ロセテ
★出演:ブルース・ダーン、カロリーヌ・シロル、ブライアン・コックス2019年/スペイン・アメリカ・フランス/

英語/89分/スコープ/カラー/5.1ch/日本語字幕:星加久実/原題:
Remember Me
(c)2019 CREATE ENTERTAINMENT, LAZONA,
KAMEL FILMS, TORNADO FILMS AIE, FCOMM
E FILM . All rights reserved.
1月15日(金)新宿ピカデリー、角川シネマ有楽
町、ヒューマントラストシネマ渋谷公開

 

 

主人公のクロード役は、ハリウッドの名優、ブルース・ダーン。「ファミリー・プロット」(1976)、「ヘイトフル・エイト」(2015)、「FREAKS 能力者たち」(2020)など巨匠監督に愛され、本作では、第66回カンヌ国際映画祭主演男優賞を史上最年長で受賞。かつての恋人、リリィ役には、フランスの舞台女優として活躍し、実力派で知られるカロリーヌ・シロル。フランス演劇界では最も権威のあるモリエール賞の最優秀女優賞にノミネートされた経験を持ち、本作においてもその力量を、品のある華やかさをまとい存分に発揮している。

 

 

リリィとの再会を強く願うクロードは、なんと、アルツハイマーのフリをして施設への入居を企てる。娘や孫には親友とスペインへ〝ぶらり旅〞に出ると伝え、医師の診断書も手に入れ、シェーンに協力してもらいついに施設での共同生活にこぎつける。

 

しかし、リリィの記憶からは、クロードとの想い出はすっかり消し去られていた。毎日、リリィと一緒に過ごす時間を増やし、ゆっくりと語りかけながら、ふたりの想い出を呼び覚まそうと奮闘する。ニューヨークとパリでデートを重ねた輝かしい記憶は、ユリの香りやガーシュインの名曲で彩られる。

 

43年間、クロードが大切に しまっておいた彼女からの手紙を、施設の庭のベンチで、慈しむように読み上げるリリィ。その横で心地よく聴き入るクロードの姿は、なんとも穏やかな気持ちにさせてくれる。そして彼女から最後に届いた手紙に語られていた真実の愛は、シェイクスピアの戯曲、ハムレットがオフィーリアに宛てた究極のラブレターになぞられる。さらにクライマックスでは、リリィの生涯最高の舞台だった「シェイクスピアの〝冬物語〞」が、ついに奇跡を起こす。

 

 

 

夫と愛人のあいだで、最後まで夫を裏切らなかった王妃ハーマイオニー同様に、リリィも結婚を守り通した人生だった。物語の終盤、そんなロマンスを経験したクロードとリリィの夫が幾星霜を経て交わす言葉の奥深さに、わたくしは最も胸を熱くした。この愛の物語は、キラキラと希望に満ちていて、どこまでも美しかった。

 

 

小川陽子氏
日本医学ジャーナリスト協会理事・広報委員。国際医療福祉大学大学院医療福祉経営専攻医療福祉ジャーナリズム修士課程修了。同大学院水巻研究室にて医療ツーリズムの国内・外の動向を調査・取材にあたる。2002年、東京から熱海市へ移住。FM熱海湯河原「熱海市長本音トーク」番組などのパーソナリティ、番組審議員、熱海市長直轄観光戦略室委員、熱海市総合政策推進室アドバイザーを務め、熱海メディカルリゾート構想の提案。その後、湖山医療福祉グループ企画広報顧問、医療ジャーナリスト、医療映画エセイストとして活動。2019年より読売新聞の医療・介護・健康情報サイト「yomiDr.」で映画コラムの連載がスタート。主な著書・編著:『病院のブランド力』「医療新生」など。

 

 

 

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