厚生労働省は1月25日、新型コロナウイルスワクチン接種について全国の自治体向け説明会を開催。医療従事者や高齢者、高齢者施設等従事者などの接種順位や接種方法などについての概要を説明した。高齢者施設等従事者については、在宅サービス従事者の接種が優先されないことが懸念される。

 

 

まずは医療従事者から、在宅介護は優先されず

 

厚労省はワクチンが承認された場合、早急な接種体制が可能となるよう自治体に医師会等との連携を整えるよう指示。現状のイメージでは最短で2月から3月にかけて優先接種が始まる見込み。
ワクチンは当初より全国民分の用意が難しく、厚労省はクラスター防止、重症化予防の観点から現状想定される優先順位を明示した。

 

 

最も早く接種が始まるのは感染リスクの高い医療従事者、次いで高齢者、その次に高齢者以外で基礎疾患を有するもの、及び高齢者施設等の従事者となっている。以下はワクチンの供給体制が整いしだい順次接種となる。なお、介護療養型医療施設の従事者は医療従事者として、介護医療院、介護老人保健施設の従事者については、医療機関と同一敷地内にある場合には医療機関の判断により医療従事者としての扱いとなる。

 

「高齢者施設等の従事者」については具体的な施設種別が明示された。基本的には介護施設や有料老人ホーム・サ高住などの「居住系施設」となり、デイサービスや訪問介護、ショートステイなどの在宅系サービスは含まれていない。

 

これまで各業界団体などが優先接種に在宅サービス従事者も含めるよう厚労省に要望していた。しかし、早期に提供できるワクチンに限りがあること、また居住系は24時間感染者のケアを継続しなければならないことから、クラスター発生リスクを回避するという厚労省の狙いがある。

 

 

居住系・在宅系横断の業界組織である一般社団法人全国介護事業者連盟(東京都千代田区)の斉藤正行理事長は、これまでの厚労省とのやり取りから「ワクチンに限りがあり国としても苦渋の決断であることは理解できる」とした上で、「次の順位として一般と同列のタイミングとはならないよう要望していく」と引き続き交渉を続ける考えを示した。

 

 

大規模デイを運営するエムダブルエス日髙(群馬県高崎市)の北嶋史誉社長は「在宅サービス従事者の中でも、要介護度が高い利用者を抱える訪問系を優先するなど順位付けが必要ではないか」と、介護サービス利用者全体のリスクに鑑みた見解を述べた。

 

 

従事者も同時に施設内で接種可

 

ワクチン接種場所は原則、市町村が設ける会場か接種実施医療機関となる。ただし、高齢者施設では高齢者の移動負担などを考慮し、併設医療施設や巡回による接種も可能としている。巡回による施設内での接種を希望する場合、嘱託医・かかりつけ医が接種実施医療機関に該当するかを確認する必要がある。該当しない場合は市区町村に相談の上、調整が必要となる。

 

 

高齢者施設等の従事者の接種方法については、原則住民票所在地の接種実施医療機関での接種となる。このとき、優先接種である証明を持参する必要があり、施設側は従事者に対して証明書の交付をしなければならない。

 

ただし、優先接種順位が異なる高齢者と高齢者施設等の従事者であっても、市町村と施設、双方の体制が整っており、また施設全体における入居者の日常的な健康管理を行う医師が確保されているなどの一定の要件を満たせば、「高齢者と同じタイミングで従事者の接種を行うことも差し支えない」としている。

 

 

大前提としてワクチン接種は本人が決めること。認知症など意思確認が難しい場合、家族や嘱託医の協力を得ながら意思確認をし、接種についての同意を確認できた場合には接種可能としている。
また、新型コロナ禍においてのワクチン接種は、自治体職員、医療・高齢者施設従事者にとってももちろん前例がない。まずは希望する人のスムーズな接種を優先し、過大な事務負担がない設計が望まれる。

 

 

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