自主・廃業清算も急増
大手信用調査機関の東京商工リサーチ(東京都千代田区)は1 月8 日、2020 年の老人福祉・介護事業の倒産件数が118 件(前年比6.3%増)だったとレポートした。介護保険法施行の2000 年以降で最多となった。合わせて、廃業・解散など市場からの自主的撤退も、過去最多となったと明らかにした。
倒産件数は20年12月2日時点で過去最多を更新したが、年末までにさらに6 件が増えた。
同社レポートにおける「老人福祉・介護事業」は、訪問介護事業、通所・短期入所介護事業、有料老人ホーム、その他、の4区分。倒産の実態を提供サービス別にみると、「訪問介護事業」が56件(構成比47.4%)と約半数を占めた。
次いで、デイサービスなど「通所・短期入所介護事業」が38件(同32.2%)。前年比18.7% 増となった。件数増加の一方、負債総額は140億1300万円で前年比13.3%減となった。
要因の1つには前年、負債53億8600万円を抱え、民事再生法の適用を申請した「未来設計」(有料老人ホーム運営)の反動減がある。また、1件あたりの負債の小規模化もある。
負債額別で見ると、1000万円以上5000万円未満の80件(前年比5.2 % 増、構成比67.7%)が最多。従業員数別では、5人未満が79件(前年比6.7%増、構成比66.9%)、5人以上10人未満22件(同46.6% 増、同18.6%)、10人以上20人未満9件(同43.7%減、同7.6%)と続き、経営基盤が脆弱な小・零細規模の事業者が倒産総数のメインボリュームとなっている。
倒産のうちいわゆる「コロナ倒産」は、通年で7件。うち6件は、感染を恐れた利用控えが顕著となった通所・短期入所介護事業者であった。コロナ倒産は20年2月から10月は3件にとどまっていたところ11月から、年末に向け、4件が息切れ倒産に至ったと見られる。
市場撤退、573件
一方、20年中、自主的に事業を停止した「休廃業・解散」は455件。前年比プラス15.1%と急増し、こちらも過去最多を更新した。前述の倒産と合わせると、20年内に573事業者が市場から退出したことになる。
休廃業・解散の原因は、人手不足や後継者難、業歴の浅い企業のノウハウ不足といった前年までと同様のものに加え、新型コロナ禍によるものが大きい。利用者減に伴う売上減少や感染防止対策の負担増、さらにコロナ禍の収束の見通しが立たないことから、「経営体力のあるうちに事業をたたむ選択をしたケースも多い」と分析している。