現場の好事例 サイトで発信
SOMPOケア(東京都品川区)は、家族介護者向けの認知症ケアに関する情報サイト「あんなこんな」を運営している。創設の経緯や運営における取組について、市場開発部訪問看護新規開発課長・認知症プロジェクト推進部兼務の横江美那子氏、教育研修部教育研修サービス課リーダーの大森薫氏に話を聞いた。
――「あんなこんな」の特徴は。
大森 当社の認知症対応では、「HECT」という手法を用いていますが、これは認知症の周辺症状が起きたときの要因を明確化し、それを軽減・解決する方法を見つけ出す当社独自のアプローチです。「あんなこんな」では、このHECTを用いた好事例を掲載。在宅介護者や本人を対象としています。

教育研修部教育教育研修サービス課リーダー 大森薫氏
横江 チャットボット風の機能により、閲覧者がシチュエーションを選択し、解決策や事例にたどり着くことができます。困りごと検索、キーワード検索もでき、Q&A方式でビジュアルも見やすくなっています。そして、「なぜそれで解決するのか」についても記載。そこに当社の認知症ケアのプロの知見が詰まっています。

認知症プロジェクト推進部 横江美那子氏
――サイト創設の経緯は。
大森 2019年12月にプロジェクトを始動。18年より、現場の事例を拾い上げる取組で社内ノウハウの共有に努めており、これが蓄積されてきたことで、一般の方向けにも情報を提供していくことにしました。SOMPOホールディングスとしても「SOMPO認知症サポートプログラム」を打ち出しており、「あんなこんな」の開設はこの一環でもあります。共生社会を広くサポートするツールとして、活用してもらいたいという思いがあります。
SOMPO独自の手法公開
――具体的な活用方法について。
大森 「お薬を飲んでもらえない」「夜眠れない」「外出から戻らない」といった困りごとに対し、複数のヒントを提示します。例えば、「夜しっかりと眠るためにも、あえて昼寝を1時間ほどとってみては」など。日中の居眠りが減り、メリハリがつくことで夜間の安定した睡眠につながった事例があります。夜間の睡眠が不十分だと、混乱や不安などの症状にもつながるため、この方法により様々な症状が改善される可能性があります。
――今後の展望を聞かせてください。
横江 取り入れやすいツールや商品の紹介・使い方などと併せた情報発信も視野に入れています。認知症の知識を深堀する勉強のためのサイトではなく、閲覧者の方の視野が広がったり、ケアを楽しく感じてもらえたりすることにつながるサイトを目指しています。
大森 「あんなこんな」のベースにあるのは現場の事例であり、専門職がバックにいるサイトであるということで、信頼してもらえる情報発信をしていきます。認知症ケアは、明るい場面ばかりではありません。しかし、行き詰ったときに「あんな方法、こんな方法もあるんだ」と少しでも前向きな気持ちになってほしい、そのための場所をつくっていきたいと考えています。