<連載第114回 高年齢者雇用安定法 4月1日施行>
早めの計画策定が大切
昨年改正された高年齢者雇用安定法(以下では「本法」といいます)が、令和3年4月1日に施行されます。
本法は高年齢者等の職業の安定その他福祉の増進を図り、経済及び社会の発展に寄与することを目的とする法律です。
事業主は本法改正までに希望者全員に対して、65歳までの雇用確保措置をとることが義務付けられています。それに加えて、本法改正により65歳までの「雇用」確保(義務)を維持しつつ、65歳から70歳までの「就業機会」を確保するための高年齢就業確保措置をとることが努力義務となります。
努力義務である高年齢就業確保措置としましては、
(1)定年年齢の70歳までの引き上げ
(2)定年廃止
(3)70歳までの継続雇用制度の導入
(4)70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度の導入
(5)70歳まで継続的に、(ア)事業主が自ら実施する社会貢献事業(イ)事業主が委託、出資(資本提供)等する団体が行う社会貢献事業に従事できる制度の導入
が挙げられます。
(3)につきましては、子会社や関連会社等の特殊関係事業主に加えて、他の事業主により行われるものも含まれます。他の団体で当該措置をとる場合、自社と団体との間で、当該団体が高年齢者に対して社会貢献活動に従事する機会を提供することを約する契約を締結する必要があります。
(4)と(5)の実施に関する計画につきましては、過半数労働組合等の同意を得て導入することになります。
(3)から(5)までにつきましては、対象者を限定する基準を設けることができますが、高年齢者雇用安定法の趣旨に反するもの(例‥「会社が必要と認めた者に限る」「上司の推薦がある者に限る」といった基準がないに等しく、事業主が恣意的に高年齢者を排除するおそれのあるもの)や公序良俗に反するもの(例‥「男性(女性)に限る」といった性別に基づく差別に該当するもの)は認められません。
この対象者選別基準につきましては、具体的な条件が双方にとって理解できるように労使間で十分協議することが望ましいと考えられます。
本法の高年齢就業確保措置は当面の間、努力義務となっておりますが、将来的には義務化される可能性がありますので、早めに計画の策定及び労使間での協議を進めることが望ましいと考えられます。
弁護士法人ALG&Associates 執行役員・弁護士
家永 勲氏
【プロフィール】
不動産、企業法務関連の法律業務、財産管理、相続をはじめとする介護事業、高齢者関連法務が得意分野。
介護業界、不動産業界でのトラブル対応とその予防策についてセミナーや執筆も多数。