土屋(岡山県井原市)は2020年8月設立。ALS、筋ジストロフィーなどの難病のほか、脳性麻痺、脊椎損傷など重度の障害を持ち、常時支援を必要とする人に、食事、排泄、移乗など、生活全般を支える重度訪問介護サービスを提供している。高浜敏之社長に、事業の現状と今後について話を聞いた。

土屋 高浜敏之社長
障害者サービス「脱施設」推進
――法人の概要について。
高浜 現在、重度訪問介護及び訪問看護事業所を全国で26ヵ所運営しており、従業員数は800名以上となっている。
サービスの対象になるのは、障害支援区分4以上に該当し、体に麻痺があり歩行、排泄などが困難な人など。重度の障害を持つ人が自宅で当たり前に過ごすには、1日数時間までのサービスと限られた中では困難だ。必要に応じて、24時間体制で365日利用者の自宅を訪問し、入浴、排泄、食事などにおける介助、調理・洗濯・掃除など日常生活のサポート、外出中の介護を行う。
生活支える人材育成
利用者は、気管切開による喀痰吸引や胃ろうによる経管栄養などの医療的ケアを必要する人も多く、ヘルパーには資格が必要だ。当社では教育研修事業にも取り組み、この分野が未経験の人でも働けるように、必須資格である「重度訪問介護従事者」を無料で取得可能にしている。さらにその上位資格で医療的ケアの実施に必要な「統合課程」も受講ができる。就職希望者がスムーズに業務に当たれるよう、バックアップ体制を整えた。
――重度訪問介護を始めるに至った理由は。
高浜 障害当事者の参議院議員である木村英子氏や、重度全身性障害者という立場から、重度訪問介護という制度の設立に関わった新田勲氏との出会いがきっかけとなった。障害があっても「施設でなく、地域で普通に生きたい」という思いに強く共感した。そこから、障害者福祉の社会運動に身を投じる中で、その人達が地域で生きるために必要となる介護の供給が、想像以上に不足していることを知った。
厚生労働省によると、私が重度訪問介護事業を始める直前の13年時点で、重度訪問介護事業所は全国で約6000ヵ所、利用者数は約9300人。だが、日本ではALSの患者だけでも1万人と言われている。
――今後については。
高浜 全国で事業所数を拡大していく。現状の計画では2~3年後には、現状の1・5~2倍の規模になる見込みだ。障害者福祉においても、「入所施設から地域生活へ」への機運は高まっている。高齢者、障害者など多様な人をカバーする地域包括ケアの実現において、地域での生活を支える重度訪問介護サービスの必要性が一層増すだろう。