東証一部上場で介護大手ツクイ、介護・看護人材サービスのツクイスタッフなどを傘下に持つツクイホールディングス(横浜市)は8日、投資ファンドによるTOB(株式公開買い付け)に賛同すると表明。また、精神疾患患者に特化した訪問看護で同じく東証一部上場のN・フィールド(大阪市)も別のファンドのTOBに応じる。ジャスダック上場のユニマット リタイアメント・コミュニティ(東京都港区)は筆頭株主でグループのユニマットライフによりTOBが実施される。介護・看護を主力事業とする企業が次々に資本市場から去る。

 

 

 

ツクイの買収を予定しているのはMBKパートナーズグループの運営するファンドだ。日中韓に特化して投資を行っており、日本においてはUSJ、アコーディアゴルフ、ゴディバジャパンなど8社の投資実績がある。

 

ツクイの祖業は土木事業だ。1969年に津久井土木として設立され、83年に介護事業を開始した。介護事業の拡大により2004年に上場。現在、有料老人ホーム、グループホーム、サ高住などの居住系は約80拠点・3400名の入居者がおり、デイサービスにおいては約560拠点で業界トップ。居住・在宅系の全サービス拠点数では、ニチイ学館、SOMPOケアに次ぐ業界大手の一角。全国47都道府県のすべてに事業所があり、利用者は10万人を超える。

また、介護・看護人材サービスのツクイスタッフ、福祉車両・機器リースのツクイキャピタル、IT事業のDIGITAL LIFEの設立、さらにはシナジーが見込まれる事業への投資を見込みファンドを組成するなど、事業領域の拡大を進めていた。

 

 

 

新型コロナで先行き不透明

 

しかし、グループの売上は介護保険事業が8割以上と、今後ますます下げ圧力が高まる介護報酬改定の影響を受けやすい。また、新型コロナウイルス禍においては主力であるデイサービスの利用控えは免れず経営への影響は必至だ。上場会社として投資家から求められる配当へのプレッシャーも相当なものがあっただろう。

 

実際に売却に向けて動き出したのは昨年10月。事業会社・ファンド7社に入札への参加を打診した中で、成長戦略についての提案内容や提示された条件が最も高かったことなどを考慮し、MBKパートナーズグループを最終買付候補者として選定したという。TOB成立後は取締役の過半数をファンドが派遣。創業家でもある津久井宏社長は6月に退任する予定だ。ツクイの広報を通じて津久井社長に取材を打診したが「応じられない」と回答した。
今後、投資ファンドの「経営のプロ」によりどのように変化していくのか、またファンドの出口戦略についても注目が集まる。

 

 

 

精神疾患特化で急成長した訪看

 

2003年に大阪で設立されたN・フィールドは、精神疾患特化の訪問看護ステーション「デューン」を全国に約210拠点展開。13年に訪問看護が主力の企業としては初めて上場した(ジャスダック)。15年に東証一部へ鞍替え、17年にはゴールドマン・サックス証券が同社の将来性を見込んで「買い」のレポートを出したことで資本市場では話題になった。

 

 

利用者は順調に拡大を続けていた一方で、出店・離職に伴う採用コストの増加が営業利益を圧迫し18、19事業年度で2期連続で減益。19事業年度まで4年連続で営業利益率が前年を下回って推移するなど訪看経営の難しさが露呈した。

 

 

同社を買収するのは国内屈指の投資ファンドと言われるユニゾン・キャピタル系が運営するファンドだ。ユニゾンは17年にヘルスケアの経営支援に特化した事業会社「地域ヘルスケア連携基盤(CHCP)」を設立。医療法人社団鉄祐会の武藤真祐医師が代表取締役会長を務めている。すでに3つの病院、100を超える調剤薬局を取得しており、今後はさらに在宅医療や介護などを加えていく考えだ。

 

 

また、ユニマット リタイアメント・コミュニティは筆頭株主であるユニマットライフがTOBを行う。同社もまた介護保険事業への依存はリスクと捉え、リゾート事業などグループ会社と連携を進めていく考え。アクティブシニアを対象としたCCRCや多世代共生型住宅の開発も検討する。

 

介護・看護事業が主力の上場3社によるTOB賛同の発表は、介護報酬に依存する事業モデルへの警鐘とも受け取れる。事業の多角化は待ったなしだ。

 

 

 

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