空き家・空き地の相談センター
住宅相談センター(名古屋市)が運営する任意団体、空き家・空き地の相談センター(同)は、介護事業者や監理団体と連携し、空き家を外国人技能実習生用の住居として活用する取り組みを行っている。2019年度には、技能実習生の生活を「バディ」がサポートする仕組みを導入。実習生が地域に溶け込み暮らせる体制を整えている。
生活サポーター導入 外国人に社会参加
同団体は、17年に設立。空き家対策・活用についてのコンサルティングを行っている。
18年から、介護・医療事業者と連携した空き家活用事業を本格的にスタート。事業の内容は、同団体が市民から空き家を募集し、住宅診断や所有権の調査などを無料で実施。問題がなければ、介護事業者などへ貸し出しをするもの。その際、日本での生活全般のサポートを担当する「バディ」と呼ばれるボランティアを付けるのが特徴だ。
バディは、ゴミ出しや騒音など生活についてのルール、買い物や病院のかかり方、地域行事など、日本での生活方法や文化などを伝える役割を担うもので、同団体が地域から募集している。活動時間や内容は自由で、一緒に散歩する、料理をするといった活動も行われる。バディの導入で、近隣住民とのトラブル回避、コミュニケーション促進のほか、「外国人に家を貸すことへの抵抗感」の緩和が期待できるという。
吉田貴彦代表は「事業者からは、『バディさんのおかげで、実習生が地域に馴染むことができ定着が進んだ』と評価の声が挙がっています」と語る。「独居高齢者が施設に入居する際、入れ替わりでその施設の実習生に住んでもらい、空き家発生を抑制したケースもあります。貸し手と借り手の双方にメリットがある取り組みだと思っています」

吉田貴彦 代表
空き家数4位 愛知県の課題
同団体がこの取り組みを開始した背景には、愛知県内で生じている、空き家の増加、外国人との共生という2つの課題がある。
総務省が18年に実施した「住宅・土地統計調査」によると、愛知県の空き家率は11.0%となっており全国で5番目に低い。しかし、総数では39万3800戸と全国4位。また、同団体の所在地で、名古屋駅のある名古屋市中村区は、空き家予備軍の比率が33.6%と県下1位となっていること、19年度には人口が転出超過に転じたことなどから、空き家対策が喫緊の課題となっている。
一方で、自動車・航空産業などの製造業が県の産業を牽引してきたことから、外国人労働者は多いが、「外国人であることを理由に、入居を拒否され住居が借りられない」というケースもあり、ここにも別の課題がある。
「介護分野では今後、実習生など外国人人材が必要とされます。この取り組みを通じて、その人々を温かく迎え入れることで、空き家の解消と外国人との共生という2つの地域課題を解消できると期待しています」(吉田代表)。