奨励金制度で若者の流入促進

先日、CCTV(中央テレビ局)で社会問題を取り上げる番組「新聞調査」が、介護現場の現状を特集し、大きな反響を呼んだ。
番組に出演した北京の富裕層向け施設で働く20代の女性は専門学校の「老年服務(高齢者サービス)」コースを卒業。彼女によると専門学校卒業後、3年間以上介護業界で就業しているのは、同級生の3割程度で、大半が他業界での就業を選んだという。

 

 

中国民政部によると、中国では約200万人の高齢者が4万の介護施設に入居しており、それに対して介護人材はわずか20万人だという。スタッフ1人あたり高齢者10人をケアしていることになる。

 

スタッフの平均年齢は近年高くなっており、上海の平均年齢は50.9歳となっているほか、低学歴者がほとんどで離職率が高いことが深刻な課題となっている。このような人材不足問題を何とか打破するため、政府は昨年末からさまざまな政策を打ち出し、若い世代を介護業界に呼び込もうとしている。

 

まず、介護人材を育成する教育機関および大学内における介護専門の学部を増設した。また、若者の介護業界への就業を促進させるため、奨励金を整備した。さらに、無料の研修コースや技能コンテストを各地で開催するなど、介護分野への資金投入を惜しまない。

 

 

奨励金に関しては、北京の場合、次のような制度を設けている。
①就職奨励金:5万元(約80万円)支給。専門学校卒業生は分割支給。
②現場手当:平均1000元(約1万6000円)/月。これは平均給料の4分の1に相当。

 

 

これは一例だが、各地でも同類の奨励金制度が設けられている。
中国で高齢者政策をリードする上海市政府は昨年公表した「上海市養老産業の発展を加速する若干の意見」の中で、「介護スタッフの賃金等級システムを構築する」と言及した。介護スタッフの所有資格を基準とした賃金制度を導入することで、キャリアアップの道を広げる。それにより、介護人材の平均収入を高め、さらには社会地位の向上を目指す。

 

 

冒頭にあげた番組では介護現場で働く男女カップル2名が「今は結婚できる自信がない。今の給料ではとても家庭を築くことができない」とコメントしており、将来に不安を感じているようだった。政府の努力が近い将来、実を結び介護業界で働くすべての人が幸せな人生を送れるようになることを願いたい。

 

昨年11月には長江デルタで技能コンテストが開催された

 

 

 

 

 

王 青氏
日中福祉プランニング代表

中国上海市出身。大阪市立大学経済学部卒業後、アジア太平洋トレードセンター(ATC)入社。大阪市、朝日新聞、ATCの3社で設立した福祉関係の常設展示場「高齢者総合生活提案館ATCエイジレスセンター」に所属し、広く「福祉」に関わる。2002年からフリー。上海市民政局や上海市障がい者連合会をはじめ、政府機関や民間企業関係者などの幅広い人脈を活かしながら、市場調査・現地視察・人材研修・事業マッチング・取材対応など、両国を結ぶ介護福祉コーディネーターとして活動中。2017年「日中認知症ケア交流プロジェクト」がトヨタ財団国際助成事業に採択。NHKの中国高齢社会特集番組にも制作協力として携わった。

 

 

 

スポンサーリンク

この記事が気に入ったら
フォローしよう

最新情報をお届けします

Twitterでフォローしよう