前回に続き、現時点で採られている新型コロナウイルス感染症対策に焦点をあてる。緊急事態宣言下にある地域では、新型コロナウイルス感染者の急増に伴い、入院患者が受け入れられないケースが生じる「医療崩壊」が懸念されている。しかし、日本は欧米諸国に比べて人口当たりの病床数が多く、感染者数は少ない。なぜ、「病床は逼迫する」のか。今回は、医療提供体制の問題について見ていく。

 

 

病床数世界一も逼迫する現場

 

「首都圏、コロナ入院困難」、「患者受け入れ低迷」――。こんな見出しが日刊紙のトップを飾ることも多い昨今、コロナ患者受け入れに伴う医療提供体制の逼迫は依然として、喫緊の課題となっている。

 

ただ、この「病床」。改めて諸外国とその数を比較すると、日本が突出していることに驚かされる。OECD加盟各国のなかではトップで人口1000人あたり13.0床と、加盟国平均の約3倍の病床数を持つ。急性期病床についても日本は同7.3床で群を抜いている。一方で、日本の累計患者数は欧米に比して少なく、2月中旬時点で人口の約0.3%(英国は約6%)に止まっている。

 

言うなれば、世界一病床が多く感染者数は少ない日本。そこで医療が逼迫する原因は機能分化が進まず、適切に活用されてこなかったことに他ならない。

 

1000人あたりの病床数【OECD加盟国】

 

 

コロナ禍の現在、国内の総病床数は約160万床。これを分母とし、都道府県が医療機関と調整を行った上で確保しているコロナ対策病床数を除すると、3月3日現在でのコロナ対策病床数の割合は、1.9%となる。英国の22.5%や米国の11.2%に比べ、桁違いに少ない。

 

背景には、欧州では多くの病院が大規模な公的病院であり、行政の意向を反映しやすいことなどがある。
コロナ禍では短期間に集中治療室を増やすなど、政府主導での対応を実現しているという。一方、日本の場合、公立と私立の比率が逆転。民間病院が約8割を占める。2割の公立病院がコロナ患者を受け入れ、民間の受け入れは「3割弱にとどまる」とする調査もある。

 

 

 

問題は対応ベッドの数の不足だけではない。重症以外の中等症者・軽症者の受け入れ体制が整わず、中等症、軽症に移行した患者がそのまま重症者向けベッドに止まる非効率も生まれている。受け入れ病床の確保に加え、後方支援病床の確保、地域での受け入れ体制作りにも、同様の緊急性があった。

 

 

にもかかわらず、その確保のための施策は後手に回った。もとより、地域医療構想の中で長年、議論されてきた医療機能の分化は、理想通りには進んで来なかった。役割分担が議論され、機能分化が進んでいれば、中等度・軽症者を然るべき病床に移し、重症者を速やかに入院させられる。

 

 

 

2月13日施行の改正感染症法には医療機関に対する勧告・公表の規定が盛り込まれたが、運用は基本的には知事に委ねられ、病床確保が進むかは未知数だ。コロナ対応において、不可欠になる機能分担と連携について、先駆的な取り組みも行われている。千葉県の鴨川市、南房総市など4市町からなる安房地区だ。

 

 

ここでは、コロナ対策において、発熱外来と一般診療を安房地域医療センター、軽症者の入院は南房総市立富山国保病院、中等症から重度の患者を亀田総合病院が受け入れ、地域の医療機関や消防、医師会が連携するスキームができている。ここで活用されているのが、病院運営を柔軟に行う「地域医療連携推進法人」の仕組みだ。これは、官民を問わず病院間で病床を融通したり、医療従事者を配置転換したりできるもの。

 

 

 

安房地域では、コロナ発生前からこれを設立し、医療機関相互で機能分担と業務の連携を推進し、効率的な質の高い地域医療を提供する体制確保を整えてきた。一向に収まる気配のないコロナ禍、こうした機能分化と連携の現場に学ぶところは大きい。

 

 

 

 

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