オンライン診療・服薬指導、電子処方箋
オンライン診療で診察し、電子処方せんを発行し、薬局がオンライン服薬指導をすることを、医療デジタル3点セットと呼ぶ。
著者も専門委員を務めている内閣府の規制改革推進会議の医療介護ワーキンググループ(WG)で、このデジタル3点セットが議論となっている。オンライン診療については2020年4月、新型コロナの感染拡大の渦中に規制改革推進会議の特命タスクフォースが、これまで認められていなかった「初診からのオンライン診療」を突破したことが大きな話題となった。
そして20年10月には関係3閣僚による「初診を含めたオンライン診療の原則解禁」が公表され、コロナ禍以降も恒久化するとしている。
電子処方せんについても今年3月のWGで、遅々として進まない現状が取り上げられた。電子処方せんの議論は08年から始まっているが、一向に実現しない。
今回、20年3月より「健康・医療・介護情報の利活用に関する検討会」が発足し、ようやく議論が進みはじめた。まず電子処方せん管理サーバーは支払基金、国保連のサーバーを使用することになった。これに関して3月のWGでも、以下の議論がなされた。支払基金、国保連の医薬品情報はレセプト情報に依存しているので、1.5か月のタイムラグが生じる。
このため電子処方せん管理サーバーで医薬品の重複投与などの検出を行うには、直近の処方データの追加が必要だ。また医師が処方せんの電子認証を行うHPKI(公開鍵)も課題だ。HPKIは手続きが煩雑でその普及率は全医師の5.5%に留まっている。
またオンライン服薬指導も、長らく薬剤師との対面が義務付けられていたことから実現には至っていなかった。これを15年の日本再興戦略において「特例として国家戦略特区でのテレビ電話を活用した服薬指導が可能になるよう、法的措置を取る」という方針が出された。
これを受けて18年の国家戦略特区で、テレビ電話による服薬指導の実証実験が行われた。そして19年12月改正薬機法により、オンライン服薬指導をすることが決まり、20年9月に施行されることになった。
しかし改正薬機法に基づくオンライン服薬指導は、オンライン診療時と在宅訪問診療時の処方せんの2つに限るとされた。しかもいずれの場合でも対面服薬指導を行った患者に限るとした。ところが、改正薬機法施行前に、20年4月10日の新型コロナ対応のための時限的な特例措置で一挙に事態が変わる。オンライン服薬指導が、基本的にすべての処方せんに開放されたのだ。
オンライン服薬指導の恒久化についても、今年の夏を目途にその取り組みを進めるとしている。デジタル3点セットの完成が待たれる。
武藤正樹氏(むとう まさき) 社会福祉法人日本医療伝道会衣笠病院グループ相談役
1974年新潟大学医学部卒業、国立横浜病院にて外科医師として勤務。同病院在籍中86年~88年までニューヨーク州立大学家庭医療学科に留学。94年国立医療・病院管理研究所医療政策部長。95年国立長野病院副院長。2006年より国際医療福祉大学三田病院副院長・国際医療福祉大学大学院教授、国際医療福祉総合研究所長。政府委員等医療計画見直し等検討会座長(厚労省)、介護サービス質の評価のあり方に係わる検討委員会委員長(厚労省)、中医協調査専門組織・入院医療等の調査・評価分科会座長、規制改革推進会議医療介護WG専門委員(内閣府)